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平成以降の抑え投手の劇場度・絶望度ランキング

だいぶ遅いですが、セ・リーグの新人王は、村上選手でしたね!19歳で36本96打点(歴代4位の184三振というのも凄いですね!)という成績は、ほぼ前例が無いと言ってもいい成績ですから、個人的にも納得の結果でした。今後も近本選手共々日本のプロ野球を盛り上げていってほしいですね。・・・さて、2019年の各表彰式も終わり、いよいよ来シーズンへ向けたストーブリーグ真っ只中という感じです。野球が無い日々が続きますが、暇つぶしにこのブログでも読んでみてはいかがでしょうか。今回は抑え投手についての記事になっています。最後の方はネタ指標を使ったランキングになっていますので、お暇な方はご一読を。

 

1. 戦術としての「抑え投手」の興り

抑え投手あるいはクローザーというと、今では僅差の勝ち試合で最後のイニングをカッコよく抑える投手のことを言いますよね。近年、先発投手の完投数が極端に減っていることもあり、勝ち試合の最後の一イニングを高い精度で抑える抑え投手の需要は高くなるばかりですその一方で、昔は先発投手が完投して勝利をもぎ取るのが普通でした。また先発投手が完投できない場合には、他の先発投手がリリーフとして登板し、試合を締めることが普通でした。決して強いとは言えなかった時代の国鉄スワローズに所属した金田正一氏などは、リリーフ登板が先発登板を優に超えるシーズンもあったほどであり、国鉄時代の353勝中、実に114勝をリリーフとしてマークしています。それでは、現代のような「抑え投手」が確立されたのはいつなのでしょうか

 

抑え投手もといリリーフ投手の草分け的存在としては、1962年~1969年に読売ジャイアンツに所属した宮田征典氏が知られています。大学卒業後、巨人に入団したシーズンのオフ、彼は心臓疾患を患い、発作性の頻脈のため先発として長いイニングを投げることができないという壁にぶつかっていました。これは当時の投手としてはプロとして通用しないことをも意味しましたが、ここで藤田元司コーチ川上哲治監督ら首脳陣は彼の欠点を逆手に取った起用法として、「リリーフ専門職」としての起用を試みます(⇒参照・「8時半の男」宮田征典)。分業制という概念が無かった当時、リリーフ投手が登板するのは先発投手が打たれた試合の敗戦処理が常だったため、この判断は一見宮田氏を勝つための戦力として見なしていないかのようにも取れるものでしたが、そうではなく、川上監督らはリリーフ投手の彼を同点やリードしている場面で起用したのです。入団4年目となる1965年にはリリーフとして67登板し20勝を挙げ、その時間での登板が多いことからいつしか「8時半の男」と言われるようになります。このようなMVP級の活躍で巨人のV1に貢献した宮田氏の活躍以後、リリーフ専門の投手の地位は向上し始めます

 

抑え投手の地位が上がっていく様子を見るのに良い記録として、交代完了という投手記録があります。あまり馴染みがない記録かもしれませんが、これは救援投手として登板し、試合終了まで投げた投手に付く記録です。つまり抑え投手に多く付く記録であり、そのシーズン記録を追っていくことで抑え投手が確立した時期というのが特定できそうです。

 

まずは、シーズン最高記録の推移を追っていきます。交代完了のシーズン最高記録は、1965年に先述の宮田投手が46を記録しており、それ以降は南海ホークスの佐藤道郎投手が1970年に47、1973年に50、1974年に58と立て続けに記録を更新しています。この58交代完了という記録は現代野球レベルでも多く(2019年時点で歴代8位)、佐藤投手がリリーフとして抜けた存在であったことを示しています。

しかし、これだけでは佐藤投手以外の情報が入ってこないので、次はシーズン50交代完了以上を達成した投手の人数を見てみましょう。シーズン50交代完了以上は、1970年代は佐藤投手を始めのべ5人が達成しており、1980年代にはのべ11人が達成しています。・・・これ以後順調に増えればいいのですが、そうではありません。1990年代には一度2人に減り、2000年代から22人、2010年代に37人と増えていくのです。では、この1990年代の落ち込みは何なのでしょうか

1990年代に50交代完了以上を達成した投手というと、1995年の平井正史投手(52交代完了)、1997年の赤堀元之投手(51交代完了)です。二人に共通するのは全てリリーフで登板しながら2桁勝利を挙げていること、20セーブ以上を挙げていることなどがありますが、ここで注目したいのは1試合あたりのイニング数です。両投手とも1試合あたり1.6イニング以上を投げており、抑え投手でありながら、ほとんどの試合でいわゆる”回跨ぎ”をしていたことが分かります。先述した佐藤道郎投手もほとんどのシーズンで規定投球回を投げており、初期の抑え投手はイニングを食う先発の後を継ぎ、最後まで投げる"第二先発"の意味合いが強かったということでしょう。ところが、1998年に49交代完了を記録している佐々木主浩投手の成績推移を見ると顕著ですが、1990年代にセーブ数を伸ばした投手は、年を重ねるごとに登板数あたりのイニング数が減っています。これらから、1990年代に50交代完了以上の選手数が一旦減るのは、競技人口の増加やデータ野球の浸透などにより、勝つための戦略として抑え投手のイニングが減っていった(先発投手一人あたりの先発数やイニングも減り始めた)時期であるためと説明できそうです。

一方、現在では同点時に登板し、延長に入った場合やセットアッパーがピンチを作ったケースで回跨ぎをすることはありますが、基本的には1イニングのみを抑えるのが「抑え投手」です。

これらをまとめると、1990年代という時期は先発の後を受け、複数イニングを投げて勝ち試合を終わらせる抑え投手から、リリーフの最後の一角として1イニングを抑える現代式の「抑え投手」への転換期と言えそうです。抑えではない「中継ぎ投手」の地位が向上し始め、分業制が確立された時期とも言えそうですね。

 

長くなりましたが、この項の最後に「抑え投手」がどのように増えていったかが分かるように、勝利数に対するセーブの割合をグラフにしましたので見てみましょう。

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1980年代まではほとんどの年で40%を切っていますが、1993年頃から40%を超え、以降は両リーグとも上昇傾向にあるのが分かります。このグラフからも、球団ごとに多少時期の違いはあれど、1990年代に現在で言う「抑え投手」が確立されたと言っていいでしょう。

 

2. LOB%という指標について

今回はネタ指標のランキングの項に入る前に、皆さんに知っておいてもらいた指標と記録を紹介します。一つ目はLOB%(Left On Base Percentage)という残塁率を測る指標で、以下の式で表されます。

 

LOB%=(被安打+与四死球-失点)/(被安打+与四死球-1.4×被本塁打)× 100

 

残塁率というと少し分かりにくいかもしれませんが、簡単に言うと投手が出したランナーのうち本塁に還さなかったランナーの割合で、投手の粘り強さを示す指標です。式を細かく見ると、分母が投手が出したランナー、分子が投手が残したランナーになっているはずなのです・・・・・・が、「あれ?」と思われた方も多いでしょう。分母の本塁打の項に-1.4という謎の係数が掛けられているのです・・・。どうしたことでしょう。こんなブログを始めていながら私は統計学には疎く、最近までこの係数と式が表すものの意味が全く分かりませんでした。しかし、メジャーリーグの情報を参照する際に見ているFanGraphsというサイトのLOB%のページにその答えに近いことが書いてあり、自分の中である程度納得したので以下その見解を述べたいと思います。

 

1.4という数字は打者が本塁打を打った際の得点期待値(要するに、本塁打を打つと平均して1.4点入る)であり、-1.4×本塁打という項は本塁打によって投手が失った点数を意味します。つまり、本塁打によって還したランナーの数を意味することになり、さきほどのLOB%の式は以下のように書き換えられます。

 

LOB%=(被安打+与四死球-失点)/(被安打+与四死球-1.4×被本塁打)× 100

   =残ったランナー/(出したランナー-本塁打で還したランナー)× 100

   =残ったランナー/(残ったランナー+本塁打以外で還したランナー)× 100

 

最後の式は少しややこしいですが、失点が本塁打で還したランナーと本塁打以外で還したランナーの和であることから求められます。この式から、本塁打以外で還ったランナーに比べ残ったランナーが多ければLOB%は高くなり、少なければ低くなることが分かります。ここで本塁打以外で還ったランナーとは、自身の押し出し四死球に加え、タイムリーや味方のエラー、内野ゴロなどで還ったランナーのことを指し、投手自身がコントロールし難い要素を多分に含む”指標”になります。つまり、LOB%とはそういう自身がコントロールし難い数字に対する残塁率の高さを示す不安定な指標であり、それ故に投手個人の能力ではなく、運の良さを表す指標と言われています(このため、フィールド内打率を示すBABIPなどと同様に個人の能力に関係なく一定の割合に収束する指標だと言われている)。

 

これで-1.4という謎の係数の意味は何となく分かったと思いますが、あるケースではこの指標の問題点が浮上してきます。それは失点より本塁打の1.4倍が大きくなるときで、このときLOB%は100%を超えてしまいます。例えばある投手がソロ本塁打を打たれた後、四球を一つだけ与えた以外は抑えて1イニングを投げきった場合、その試合のその投手のLOB%は167%になります・・・イニングを重ねていけば100を切る値に収束していくとはいえ、一時でもこんなケースがあり得るのは見逃せませんよね。細かいかもしれませんが、百分率である以上100を超えることはあってはならないはずです。LOB%はフィールド上に飛んだ打球に対する投手の運の良さを表す指標としては有用ですが、このような不完全な点があります。

 

そこで今回はネタ指標を作るにあたり、以下のような簡略化したsLOB%を作ってみました。

 

sLOB%(simplified LOB%)=(被安打+与四死球-失点)/(被安打+与四死球-被本塁打)× 100

 

これはもう簡単で、単純に自分が出したランナーに対する残ったランナーの割合を示しています。LOB%では本塁打で本塁に”生還”させたランナーは自分が還したランナーとしてカウントされませんでしたが、sLOB%ではカウントします。つまり、全ての”生還”させたランナーに対する残ったランナーの割合が大きければsLOB%は高くなり、小さければ低くなります全てのHRを画一化していた従来のLOB%と異なり、ランナーがある状況での被弾が少なければ(あるいは多ければ)、それだけsLOB%に反映されることになります。既存のLOB%と異なる顕著な例として、抑え投手がセーブ機会となる2点差で登板し、ソロを一発浴びて試合を終わらせたとしても、sLOB%は変わりません。

LOB%の長所である投手の運を表す要素は無くなりましたが、こちらの方が単純な残塁率としては良いような気がします。それに、味方のエラーは難しいですが、タイムリーや内野ゴロでの失点などは投手の技術次第で防げる側面もあるため、本塁打での生還とひとまとめにして、個々の投手の能力(個性)ということにしても良いと私は思います。長くなりましたが、以上が私のLOB%に関する見解になります。なお、”生還”あるいは”本塁生還”について知りたい方は以下の記事をどうぞ。

baseball-datajumble.hatenablog.com

 

3. ブロウンセーブという記録について

もう一つ紹介したい記録というのが、MLBでは記録されているブロウンセーブ(Blown save : BS)という記録です。 これはセーブ失敗を表す記録で、セーブの条件を満たす可能性のあるリリーフ投手が登板中に同点に追いつかれるか、逆転を許した場合に記録されます。セーブの条件公認野球規則10.19にあり、ややこしいので以下にまとめておきます。

・勝ち試合の最後のアウトを取る(交代完了が付く)
・勝ち投手の権利を持たない
A. 3点以内のリードかつ無走者の場面で登板し、1イニング以上投げる
B. 次の2打者に連続でホームランを打たれた場合に同点または逆転となる状況で登板し、1/3イニング以上投げる
C. 点差に関係なく3イニング以上投げる

箇条書きの項目とA,B,Cいずれかの項目を満たした投手にセーブが付きます

 

これを踏まえると、ブロウンセーブの条件は以下のようであると考えられます。

・勝ち投手の権利を持たない
・試合終了までリードを維持して投げ切ればセーブが付く(A,B,Cのいずれかを満たす)場面で登板する
自身の登板中に同点または逆転となるランナーの生還を許す

イニングを限定している訳ではないので、早い回であってもリードした展開で登板し、同点の走者を還してしまった投手全てにブロウンセーブが付くことになります。セーブ失敗というより、セーブも含めたリリーフ失敗を示す記録になっていますが、今回の記事では抑え投手に限定したのでブロウンセーブの正確性については追究しないことにします(2021/2/13修正)。

 

このブロウンセーブをカウントしていると、その投手のセーブ成功率(S%)を求めることができます。セーブ成功率は下式で表されます。

 

セーブ成功率(S%)=セーブ/(セーブ+ブロウンセーブ)×100

 

この指標によって抑え投手がどれだけセーブ失敗しているかを明確化することができます。苛酷さの割に悪い部分がクローズアップされがちな救援投手なので率を可視化するのは酷ですが、可能な範囲で日本球界にも導入してほしいですね。

 

4. 平成の抑え投手の劇場度・絶望度ランキング

というわけで、今回私が作ってみたネタ指標の説明をします。まず、今回のネタ指標で使う指標を復習していきます。一つ目は、これは早くからスポナビに載っていたので知っている方も多いかもしれませんが、WHIP(Walks plus His per Inning Pitched)という指標です。WHIPは以下の式で表され、1イニングに出したランナーの数を示します。分子に与死球の項が無いのは、死球は一部打者の責任によるとも考えられるためです。

 

WHIP=(被安打+与四球)/投球回

 

二つ目は2項で導入したsLOB%で、これは出したランナーを本塁に還さない割合を示し、以下の式で表されます。

 

sLOB%=(被安打+与四死球-失点)/(被安打+与四死球-被本塁打)× 100

 

また三つ目は3項で紹介したセーブ成功率(S%)で、セーブとブロウンセーブの和で表すことのできるセーブ機会中のセーブ成功率を示します。

 

セーブ成功率(S%)=セーブ/(セーブ+ブロウンセーブ)×100

 

なお、このブロウンセーブはNPBでは導入されておらず記録が無かったため、今回は私が参考サイトから集計したブロウンセーブからセーブ成功率を求めています(ブロウンセーブに相当するか否かきわどい試合は、私個人の判断で判定したので悪しからず・・・)

今回はこれらの指標を使い、抑え投手に関する新たなネタ指標を作ってみました。

 

まず、WHIPが高く、なおかつsLOB%が高い抑え投手は、ファンの胃を痛める傾向にある「劇場型」のクローザーであるという発想から

 

劇場度(Degree of dramatic closer:DDC)=WHIP×sLOB%×S% / 100

 

 

また、sLOB%が高くWHIPが低い抑え投手は、ファンの胃に優しく、相手を絶望させる「絶望型」のクローザーなので

 

絶望度(Degree of absolute closer:DAC)=sLOB%/WHIP×S% / 100

 

抑え投手なのでセーブ成功率が高いことは欠かせないため、両方ともS%を掛けています。

 

今回は、現代の「抑え投手」という戦術が始まったと思われる平成以降の抑え投手について、劇場度と絶望度のランキングを発表したいと思います(ここで言う抑え投手とは、各シーズンで11S以上かつ31交代完了以上を記録した投手のこととしており、各球団から2名以上抑え投手が出ないように基準を定めています)。ですが、ブロウンセーブのカウントが思ったよりも難しく、全員分のデータを集めることはできなかったため、今回発表するのはそれぞれのトップ12になります。まずは劇場度から行きます。それではどうぞ!

※丸数字はチームの順位;登板数の横は防御率;劇場度以外の太字はリーグ最高、緑太字は当時のリーグ記録、赤太字はプロ野球記録;被打率、被出塁率にuが付いているのは、被犠打、被犠飛、失策出塁などの数値が分からず、正確な値が求められない(uncorrectedな)ため。

 

 

12 福盛 和男(2007楽天④)34登板 4.75 17S 劇場度 99.89 WHIP 1.69 sLOB% 69.4 S% 85.0
  u被打率 .289 u被出塁率 .368

楽天創生期の抑え投手である福盛和男の渡米前のシーズンが12位に
防御率を見ても分かるようにシーズン中盤から不安定な投球が続き、故障離脱後は小山伸一郎に抑えを譲った

 

 

11 吉井 理人(1989近鉄①)47登板 2.99 20S 劇場度 100.34 WHIP 1.35 sLOB% 81.7 S% 90.9
  u被打率 .233 u被出塁率 .316

現在は投手コーチとして各球団を渡り歩く吉井理人のキャリアは抑え投手として始まった
時には3イニング以上を投げ抜きながらS%は90%を超える大車輪の活躍で、チームの優勝に貢献した

 

 

10 高津 臣吾(1996ヤクルト④)39登板 3.24 21S 劇場度 100.80 WHIP 1.44 sLOB% 83.3 S% 84.0
  u被打率 .272 u被出塁率 .327

来季からヤクルトの指揮を務める高津臣吾はNPB通算セーブ数歴代2位の実力者だが、中には抑えとして頼りない年も
ブロウンセーブは4、敗戦も6とチームの不調と同調したような成績となり、オールスターではイチローに打ち取られた

 

 

9 岡本 克道(1998ダイエー④)42登板 2.54 21S 劇場度 100.89 WHIP 1.21 sLOB% 83.7 S% 100.0
  u被打率 .225 u被出塁率 .287

黄金期に入る前のダイエーのクローザー・岡本克道の2年目のシーズンが9位に
調べた中では珍しくブロウンセーブが無く、劇場度の割には安定している

 

 

8 井上 祐二(1989ダイエー④)57登板 3.30 21S 劇場度 101.64 WHIP 1.41 sLOB% 79.2 S% 91.3
  u被打率 .216 u被出塁率 .321

8位は南海末期、ダイエー元年の抑え投手・井上祐二のキャリアハイのシーズン
要所で安打を許さないしぶといピッチングで、登板、交代完了、セーブでリーグトップをマークした

 

 

7 成本 年秀(2001阪神⑥)45登板 2.34 20S 劇場度 102.88 WHIP 1.40 sLOB% 84.5 S% 87.0
  u被打率 .254 u被出塁率 .327

7位はトミー・ジョン手術から復活を遂げた年の成本年秀
ロッテでクローザーとして活躍した後、右ヒジの故障により4年間まともに投げられず戦力外通告を受けたが、野村監督下の阪神で見事復活 カムバック賞を受賞した

 

 

6 松井 裕樹(2016楽天⑤)58登板 3.32 30S 劇場度 104.52 WHIP 1.40 sLOB% 77.4 S% 96.8
  u被打率 .201 u被出塁率 .320

セーブの史上最年少記録を塗り替え続けることが期待される松井裕樹のクローザー転向2年目のシーズンが6位に
WHIPとsLOB%の割にはブロウンセーブが1度と少なく、劇場型クローザーとして評価の高いシーズン 8月には左腕最年少となる月間MVPも受賞している

 

 

5 高津 臣吾(2003ヤクルト④)44登板 3.00 34S 劇場度 105.08 WHIP 1.50 sLOB% 80.4 S% 87.2
  u被打率 .250 u被出塁率 .333

2シーズン目のランクインとなる2003年の高津はWHIP1.50をマークしながら最優秀救援投手を受賞し、年間通じてファンの胃を翻弄し続けた
この年35歳だったことを考えると騙し騙しの投球が続いていたのかもしれないが、翌年の2004年はメジャーでも抑えとして活躍し、その後もあらゆる球界を渡り歩き100S近くを挙げているのは素晴らしい

 

 

4 吉井 理人(1990近鉄③)45登板 3.39 15S 劇場度 105.38 WHIP 1.60 sLOB% 79.0 S% 83.3
  u被打率 .264 u被出塁率 .355

この後抑えとして通用しなくなってしまう1990年の吉井が1989年に続いてランクイン
前年よりもWHIP、sLOB%、S%が悪化し敗戦も9を数えており、従来の抑えとしての起用が限界を迎えていたことが見て取れる
この後ヤクルトへトレードへ移籍後、先発として開花しメジャーでも活躍した

 

 

3 C. ミラバル(2001日本ハム⑥)51登板 3.44 18S 劇場度 106.75 WHIP 1.42 sLOB% 79.5 S% 94.7
  u被打率 .273 u被出塁率 .327

来日当初は抑えとして起用されていたカルロス・ミラバルが3位に
最優秀防御率も獲得している台湾CPBL時代から抑えとして起用されていたのは、制球力を評価されてのことだろうか
2015年にはカナダで42歳にして現役復帰 野球への情熱は未だ衰えていない

 

 

2 岡島 秀樹(2001巨人②)58登板 2.76 25S 劇場度 126.21 WHIP 1.63 sLOB% 83.7 S% 92.6
  u被打率 .250 u被出塁率 .356

2位は巨人時代の岡島秀樹 ここから劇場度が突然上がり、120台と超人の域に
WHIPも凄いが、この年の岡島は何よりもセーブ成功率の高さが素晴らしい ダイナミックなフォームでランナーをためながら、寸前のところで抑える姿には相手もイライラさせられたに違いない
前年の日本シリーズ胴上げ投手ということもあって認知度も高く、この年のオールスターでは新設されたクローザー部門において初のファン投票選出者となっている

 

 

1 武田 久(2013日本ハム⑥)47登板 2.28 31S 劇場度 130.99 WHIP 1.69 sLOB% 87.5 S% 88.6
  u被打率 .311 u被出塁率 .369

貫禄の1位は2013年の武田久
ランキング対象の263人のクローザー中、WHIPはワースト2位と圧倒的な数字を残しながら、ベスト20に入ることも有りえた優秀なsLOB%を武器に2点台前半の防御率、リーグ2位のセーブを記録した劇場型クローザー界のレジェンド
WHIPが防御率を超えていた時期もあったのは記憶に新しい
被打率と被出塁率を見ると、例えが悪いかもしれないが毎打席NPBマートンレベルのバットコントロールを持つ打者と対峙しながら最終回を締めていたことになる
経験が強くした強靭なメンタルでマークした87.5%という高いsLOB%は、もはや単なる運だけで片付けられるものではない
この年は武田がNPBで通用した最後の年でもあり、怪我や身体の衰えと向き合いながら試行錯誤の結果生まれた"大記録"とも言えるかもしれない

 

 

次は絶望度になります。どうぞ!

 

12 上原 浩治(2007巨人①)55登板 1.74 32S 絶望度 101.31 WHIP 0.82 sLOB% 83.3 S% 100.0
  u被打率 .202 u被出塁率 .218 K/9 9.58 K/BB 16.50

絶望度12位は抑えに転向したシーズンの上原浩治
上原ならではの与四球の少なさも凄いが、抑えに専念した最初で最後のシーズンで30回以上セーブ機会がありながら失敗がゼロだったのも素晴らしい

 

 

11 佐々木 主浩(1998横浜①)51登板 0.64 45S 絶望度 103.26 WHIP 0.80 sLOB% 86.7 S% 95.7
  u被打率 .160 u被出塁率 .215 K/9 12.54 K/BB 6.00

横浜の38年ぶり日本一に大きく貢献した年の「大魔神」・佐々木主浩は11位に
この年は当時のプロ野球記録であるシーズン45Sを挙げた他、通算記録でも日本記録を次々に樹立し獅子奮迅の大活躍で世間を席巻した

 

 

10 藤川 球児(2009阪神④)49登板 1.25 25S 絶望度 104.57 WHIP 0.82 sLOB% 88.6 S% 96.2
  u被打率 .156 u被出塁率 .217 K/9 13.42 K/BB 5.73

抑え転向4年目のシーズンの藤川球児が10位にランクイン
WBCでダルビッシュにクローザーの座を明け渡した直後のシーズンだったせいか、序盤はやや不調だったが徐々に息を吹き返し、100を超える絶望度をマークした

 

 

9 宣 銅烈(1997中日⑥)43登板 1.28 38S 絶望度 104.95 WHIP 0.76 sLOB% 81.6 S% 97.4
  u被打率 .159 u被出塁率 .205 K/9 9.81 K/BB 5.75

KBOからNPBへの移籍第一号者である宣銅烈のキャリアハイのシーズンが9位に
前年度の期待はずれの成績を払拭し、38Sでセーブ王に輝いた KBOでは防御率と完封の通算記録を持つ他、数々のタイトルを獲得しているレジェンド

 

 

8 藤川 球児(2011阪神④)56登板 1.24 41S 絶望度 106.23 WHIP 0.75 sLOB% 81.1 S% 97.6
  u被打率 .140 u被出塁率 .203 K/9 14.12 K/BB 6.15

統一球初年度の藤川が2シーズン目のランクイン
やや不調気味だった前年終盤から復調し、史上初の通算100セーブ・100ホールドを達成 41Sで最多セーブも獲得した

 

 

7 武田 久(2011日本ハム②)53登板 1.03 37S 絶望度 106.53 WHIP 0.78 sLOB% 85.7 S% 97.4
  u被打率 .169 u被出塁率 .211 K/9 4.82 K/BB 3.11

基本的に劇場寄りの武田久だが、この年はWHIP0.78、ブロウンセーブ1つと安定した投球を披露
高い奪三振率を誇るクローザーが集まる絶望度上位陣の中で、一人打ち取るピッチングで高い絶望度をマークした異端児

 

 

6 小林 雅英(2002ロッテ④)43登板 0.83 37S 絶望度 116.04 WHIP 0.74 sLOB% 90.3 S% 94.9
  u被打率 .167 u被出塁率 .198 K/9 8.52 K/BB 6.83

6位は「コバマサ劇場」として親しまれているように劇場型のはしりとしての一面の方が強い小林雅英の本領発揮のシーズン
各指標とも抜けており、絶望度は110台をマーク 幕張の防波堤として確かな足跡を残した

 

 

5 D. サファテ(2017ソフトバンク①)66登板 1.09 54S 絶望度 126.23 WHIP 0.67 sLOB% 85.7 S% 98.2
  u被打率 .147 u被出塁率 .185 K/9 13.91 K/BB 10.20

日本記録を大幅に塗り替える54Sを記録した2017年のサファテが5位に登場
この年はWHIPも防御率も凄いが、何と言ってもダントツのセーブ機会があった中でブロウンセーブが1つだったセーブ成功率が抜けている
この順位以上は絶望度125超えの猛者ばかり

 

 

4 藤川 球児(2008阪神②)63登板 0.67 38S 絶望度 128.59 WHIP 0.70 sLOB% 91.7 S% 97.4
  u被打率 .143 u被出塁率 .198 K/9 11.97 K/BB 6.92

藤川の絶望度キャリアハイは防御率0.67をマークした2008年のシーズン
この年は北京五輪による離脱期間があり、シーズン中盤までの勢いがやや失速してしまったのが勿体ない
藤川の圧倒的な絶望度を支えるのは高い奪三振率に裏打ちされたsLOB%の高さ
来季は抑え投手の悲願である名球会入りを是非果たしてほしい

 

 

3 D. サファテ(2015ソフトバンク①)65登板 1.11 41S 絶望度 134.56 WHIP 0.63 sLOB% 89.5 S% 95.3
  u被打率 .122 u被出塁率 .178 K/9 14.20 K/BB 7.29

工藤政権一年目のシーズンのサファテは被打率が格段に低く、WHIPとsLOB%でキャリアハイをマークし2017年よりも高い絶望度を叩き出した
ソフトバンクに移籍した33歳のシーズン以降も、持続的に研究と成長を続けたことが前人未到の大記録へ繋がったのだろう
現在は股関節の故障で復帰未定だが、サファテが稀代の名抑え投手であることは周知の事実 来季にでも森から実力で抑えを奪い、外国人投手初の250Sを達成してほしいところだ

 

 

2 佐々木 主浩(1997横浜②)49登板 0.90 38S 絶望度 135.71 WHIP 0.70 sLOB% 100.0 S% 95.0
  u被打率 .122 u被出塁率 .193 K/9 14.85 K/BB 5.82

大魔神・佐々木のキャリアハイは優勝した1998年ではなく、その前年にあたる1997年のシーズン
この年は全6失点の全てがソロ本塁打による失点であり前代未聞のsLOB%十割をマークしている(これが、今回sLOB%を導入した理由でもある)
被打率、奪三振率もトップであり、如何に当時の佐々木が「抑え投手」として球界をリードしていたかが垣間見える
8月に記録した月間14Sは今でも破られていない

 

 

1 豊田 清(2002西武①)57登板 0.78 38S 絶望度 137.83 WHIP 0.61 sLOB% 88.6 S% 95.0
  u被打率 .157 u被出塁率 .173 K/9 10.36 K/BB 22.00

大魔神を抑え絶望度の1位に輝いたのは、西武のクローザー・豊田清の2002年のシーズン
抑え転向2年目のシーズンにして当時のパ・リーグ記録となる38Sを記録 勝利の方程式として森慎二とともにチームの首位独走に貢献した
このシーズンの豊田は与四球が3と上原並みに少なく、それと同時に高い奪三振率をマークしており、K/BBとWHIPでランキング対象中のトップに立っている
今後は西武の投手コーチとして、投手王国再建の手腕発揮に期待したい

 

5. 劇場度・絶望度計算ツール(2023/9/6設置)

簡単な計算ツールもあります。色々と入力して遊んでみてください。

 

劇場度・絶望度 計算ツール

 

セーブ:
投球回:(60 1/3回は'60.1'のように入力)
被安打:
被本塁打:
与四球:
与死球:
失点:(自責点ではないので注意!)
ブロウンセーブ:(未入力なら0で計算)

 

WHIP:
sLOB%(%):
セーブ成功率(%):
劇場度:
絶望度:

 

6. 終わりに

以上、抑え投手についてまとめてみました。劇場度や絶望度は、S%を掛けずに計算してみても、選手の特性が分かって面白いかもしれません(あくまでネタ指標としてですが・・・)。

今回はブロウンセーブの集計に時間がかかってしまい、投稿期間が予定より大分空いてしまいました。ホールド数など過去にはカウントされていなかった記録を辿るのは興味深いですが、今後も取り扱っていくかは今の所不透明な状況です。

次回は野手についてまとめたいと思います。また時期は決めてませんが、今年の各球団の打線についても見ていきたいと思っています。それでは、また。

※2020年以降の抑え投手含めたリリーフ投手については以下の記事にもまとめたので、良かったらどうぞ!

baseball-datajumble.hatenablog.com

www.baseball-jumble.com

www.baseball-jumble.com

 

6. 参考サイト

日本プロ野球記録

FanGraphs Baseball | Baseball Statistics and Analysis

Baseball-Reference.com