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2020年戦力分析その1 ~埼玉西武ライオンズ~

 新年を迎え、初の更新になります。前回の更新からだいぶ期間が空いてしまい、このままフェードアウトするかとも思われたかもしれませんが、今年もプロ野球の面白いデータをできるだけ独自の切り口で見ていきたいと思います。私がブログをサボっている間に、各FA選手の去就は決まったようですね。特に前西武の秋山翔吾選手は日本人選手初となるシンシナティ・レッズへの入団が決まりました!未開拓の地でどんな成績を残してくれるのか、今年の秋山選手からは目が離せません。さて今回からは、2020年のシーズンの各球団の戦力を見ていきたいと思います。最初は秋山選手が抜けた昨年のパ・リーグ覇者・埼玉西武ライオンズの記事になります。お暇な方はどうぞ。

 

1. 2019年シーズンの総括

 西武ファンの方はCSでの悔しい思い出の方が未だ強く残っているかもしれませんが、昨年の西武ライオンズは2年連続パ・リーグ優勝と下馬評を覆す強さを見せました。特に8月に山川選手を四番から下ろし、中村選手を四番に据えてからの勢いが凄まじく、ここがターニングポイントだったような気がします。ニール選手が先発するごとに勝利が付き出したのもこの辺りです。MVPを獲得した森選手も8月4日の岡田選手の怪我以降、これまでに経験ないくらいの長い期間を捕手でスタメンだったにもかかわらず、攻守に安定した活躍を見せていました。打線の組み換えと軸となる投手のローテ定着、そして森"捕手"の成長が連覇の要因と言えそうです。それでは、成績の詳細を振り返っていきましょう。

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 まずは投手からです。先発投手は規定到達が0人、防御率はリーグ最下位と厳しい結果になってしまいました。エースだった菊池雄星投手の放出に加え、前年度最多勝の多和田投手の離脱や榎田投手の不振など誤算も多く、軸となる投手を見つけるのに一年を費やしてしまったという印象です。とはいえ、今井投手、髙橋光成投手などの若手投手は良い経験を積めたし、ニール投手というエースが見出だせたことを考えれば、それほど悪いシーズンでは無かったと言っていいでしょう。若手投手がこのまま成長すれば、今季はこれより悪くなるということは無い気がします。

 中継ぎ投手は、平井投手フル回転のシーズンでした。81登板はNPB歴代2位の記録であり、KD(小松式ドネーション)もチーム1位と昨年の投手のMVPであったことは間違いないでしょう。しかし、救援陣の層の薄さのあおりを受けての登板数であったことも事実です。今季は平井投手、増田投手に続く一イニングを任せられるリリーフ投手の台頭が欠かせません。

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 (2020/1/19追記)

 次に対戦球団との相性を見てみます。ある程度イニングは投げれていますが、やはり防御率の悪さが目立ちます。特に対楽天戦、対日本ハム戦の先発防御率がすこぶる悪く、全体の防御率を悪くしています。夏場以降の楽天戦の登板が無く楽天戦の実力が未知数なニール選手を除き、ほぼ全員の先発投手がこの2チームを苦手としており、今季へ向けて投手陣が対策すべき第一関門と言えそうです。各チームのポイントゲッターは西武戦で打点を多く稼いでおり注意すべき打者はたくさんいますが、最も多い27打点を喫した楽天の浅村選手や対戦打率が.350を超えていたオリックスの吉田正尚選手、ソフトバンクのデスパイネ選手、ロッテのレアード選手は今年も厄介な相手になりそうです。

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 次に打線を見ていきます。昨季の打線は不動の三番打者だった浅村選手の穴を外崎選手と森選手の成長で埋め、さらに中村選手がキャリアハイレベルの打率・打点をマークしたことで、前年度に迫る得点数を記録しました。しかし、前年度より投手力が低下した中で、打線の迫力がやや足りなかったのも事実です。では、2018年シーズンから2019年シーズンにかけて打線がどのように変わったのか、グラフで見ていきましょう。

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 まずこのグラフの説明ですが、左から右にかけて一番から九番で出た主な打者を示しており、青色の棒はその選手の試合ごとの本塁生還数(本塁打以外で本塁に還った回数)オレンジ色の棒はその選手の試合ごとの打点を示しています。つまり、以下のようになっています。

青棒:HI/G=本塁生還数/出場試合数

橙棒:RBI/G=打点/出場試合数

 そして最も重要なのが灰色の棒ですが、これは簡単に言うとそのシーズンの投手の失点に対してどれだけ得点に関与したかを表しており、以下の式で表されます。

灰棒:HI/G+RBI/G-(投手の失点×2-被本塁打)×(スタメン打席数/チーム打席数)/9/143

  =HPR/G-RR/G

 ここでHPRは本塁生還(Home-In)+打点(Run Batted In)のことで、得点関与数を表しています。ややこしいのがRR(Responsible Run:責任失点数)という新しい指標ですが、これは投手が許した全得点関与数のうちスタメン一人が担うべき最低得点関与数を表しています。つまり、灰色の棒がプラスであればあるほど味方の失点を帳消しにする活躍ができたということになります。

 これを踏まえて先程のグラフを見てほしいのですが、2018年の西武打線は7番の中村選手まで得点貢献がプラスと切れ目の無い打線であったことが分かります。一方で、気になるのは最も指名打者として出場したメヒア選手の成績でしょうか。この年のメヒア選手はキャリアワーストのOPSを記録しており、得点貢献が大きくマイナスとなっています。他球団に取られることは防げたとはいえ、大型契約を結んだ影響は大きいでしょう。歴史的な山賊打線の影でモチベーションを完全に失ってしまっていたことが見て取れます。

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 そして得点貢献がチーム1位だった浅村選手が楽天に移籍し、主に右翼手だった外崎選手が二塁手に転向したのが2019年の西武打線です。これを見ると、外崎選手の代わりに右翼に入った木村選手が大きくマイナスとなっており、二塁手としての浅村選手の穴は埋められたもののレギュラー選手が一人抜けた穴は埋められずにシーズンが終わってしまったということが分かります。また、辻監督になってからのここ三シーズンは主力級を放出しながら、スタメン以外の選手に与えた打席が他チームよりも極端に少なく、そのためか控え選手の経験値が不足しているという問題点も昨年のCSで露わになりました。このままでは秋山選手が抜ける今季も同じことを繰り返してしまうおそれがあります。2020年は控え選手も充実したものにさせるような選手起用が大事になってきそうです。

 

2. 2019-2020シーズンの選手の動き・新戦力分析

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 2020年シーズンに向けて大きく変わったことはやはり中堅手でフルイニング出場を続けてきた秋山選手が抜けたということ一点に尽きるでしょう。2020年シーズンの大半は秋山選手の穴を埋める選手起用を模索することになることは必至であり、そのためにここ二シーズン振るわなかった投手陣の全体的な底上げが急務です。球団もそこは分かっているようで、ドラフトでは即戦力社会人投手を二人指名し、新外国人投手としては先発投手のショーン・ノリン投手、救援投手のリード・ギャレット投手を獲得しました。ようやく西武に戻ってきた松坂選手のユニフォーム姿も待ち遠しいですが、この4人がどのくらい一軍戦力に食い込めるかが投手陣の命運を握っていると言ってもいいでしょう。また、外国人野手としては秋山選手に代わる選手としてコーリー・スパンジェンバーグ選手を獲得しています。この選手については、近年の成績をまとめましたので見てみましょう。

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 コーリー・スパンジェンバーグ選手はアメリカ合衆国出身の今季29歳になる選手で、内外野守れるユーティリティプレイヤーです。2017年にはサンディエゴ・パドレスで129試合に出場し、打率.264、本塁打13本という成績を残しています。キャリアハイであるこの年は三塁手として86試合、左翼手として25試合に先発出場しています。2018年には二塁手としても30試合に先発出場し、2019年にはブルワーズの3Aで中堅手として19試合に先発出場しており、あらゆるオーダーに応える起用が見込めそうです。とはいっても辻監督が金子選手の中堅手への転向を示唆しており、また外崎-源田の二遊間を崩すとは考えづらいので、当面は左翼手または中村選手がDH時の三塁手として起用されると考えられます。打者としてのタイプは出塁率は高い方では無く三振が多いが、パンチ力と機動力がある感じなので、一番打者あるいは下位打線で起用されることが予想されます。キャンプもオープン戦も始まってないのでまだ何も分からないことだらけですが、何にせよ早く日本での生活に慣れてほしいですね。

 

3. 2020年の戦力分析・オーダー予想

 最後に今シーズンの投手陣・野手陣の陣容を見ていきます。

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 ここで先発陣のlastINは昨年のCSを含めた一軍での投球回数(ノリン投手は2A、3Aでの合計投球回数)、救援陣のlastGは昨年のCSを含めた一軍での登板数(ギャレット投手は3A、メジャーでの合計登板数)を示しています。ニール投手にはこのままローテの柱として頑張ってもらうとして、今井投手、髙橋光成投手は規定到達を最低目標に今季も成長を続けていってほしいですね。この3人の活躍が3連覇・悲願の日本一に向けた第一条件です。宣言残留した十亀投手は年長者としてのまとめ役も期待するとともに、昨年9月に見せた安定した投球を続けられるように頑張ってほしいです。あとは松本投手、本田投手、ノリン投手とドラフト指名選手で争う形でしょうか。注目の松坂投手は、今年あるか分かりませんが"復刻ユニ"の試合時に一軍で見たいですね。

 救援陣は退団したマーティン投手、ヒース投手の穴を埋める作業から始めることになります。今の所未知数なギャレット投手に過度に期待するのは危険なので、ここは経験のある武隈投手、野田投手の復活に期待したいですね。また、昨年の後半戦では勝ちパターンとして重要戦力になった平良投手には昨年投げ過ぎだった平井投手と増田投手の負担を軽減する役割に期待です。まだ高卒3年目なのでどんな投手に変貌を遂げるのか楽しみですね。

 新人投手ではドラフト1位の宮川哲投手、同2位の浜屋将太投手が即戦力と目されているようです。先程も述べたように、この二人がどれだけ一軍戦力になれるかが優勝への最後のピースのような気がするので、先発と中継ぎどちらで起用されてもフル回転してほしいですね。

 次は野手の予想オーダーになります。

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 どれも大きくは変わりませんが、主に一番打者に誰を起用するかによって3パターンに分けてみました。パターンAは今季の打線をベースに秋山選手の代わりにスパンジェンバーグ選手を一番打者に組み込んだオーダーです。前項のグラフで得点貢献がプラスだった5選手(源田、外崎、山川、森、中村)のまとまりを崩すのは良くないと思うので、スパンジェンバーグ選手の実力が判明するまではこのオーダーで戦うのではないかと思います。パターンBは中堅手に転向した金子選手が一番打者も担うというオーダーですが、金子選手に負担が集中したオーダーであまり良くない気がします。個人的に押したいのはパターンCの源田選手、外崎選手に一二番を任せるというオーダーです。源田選手が3割近くを打てるようになれば一番打者として申し分ないと思いますし、九番から盗塁が上手い3人が続く形となって機動力アップも見込めます。この場合は外崎選手にはトリプルスリーを期待したいですね。

 また、どのオーダーでも指名打者として栗山選手ではなくメヒア選手を起用していますが、これは大型契約が終わり、年俸が下がったことによるモチベーションアップを期待してのものです。まだまだ20本くらいは打つ力はあると思っているので、首脳陣も積極的に起用していってほしいですね。

 ここまで若手選手については触れませんでしたが、今季は秋山選手が抜けたという絶好のチャンスなので、昨季野手転向した川越誠司選手(27)を始め、愛斗選手(23)・鈴木将平選手(22)ら外野陣は木村選手を筆頭とする一軍外野陣に食い込めるよう何かしらのアピールを見せてほしいですね(2020/6/19追記)。内野陣では中村選手がDH時の三塁が狙い目であり、山野辺翔選手(26)や佐藤龍世選手(23)らの台頭が望まれるところです。あとは、今季は東京五輪で選手が引き抜かれることも忘れてはいけません。プレミア12に出場した外崎選手、源田選手あたりは確実にお呼びがかかることが予想されるので、これらの選手の勤続疲労も心配です。二遊間を守れる選手にも少なからず出場機会があるのではないでしょうか。このように、どのポジションの選手にもチャンスがありそうなシーズンなので、色々な選手が見れそうで今から楽しみですね。

 

4. 終わりに

 以上、2020年シーズンの埼玉西武ライオンズの戦力分析でした。辻監督も今季こそは短期決戦での雪辱を果たし、選手たちに胴上げされてほしいですね。このように、今後は12回に渡って今シーズンの分析・戦力紹介をしていきたいと思います。できるだけそのファンの目線に立って分析をしていきたいと思っていますが、中には見当違いのことを言っている部分もあるかもしれません。そこは大目に見てくれるとありがたいです。明らかに間違っている点などがありましたら、コメント欄で知らせてくれると助かります。

 次回は福岡ソフトバンクホークスの戦力分析になります。それではまた。

 

5. 参考サイト

NPB.jp 日本野球機構

- nf3 - Baseball Data House Phase1.0 2019年度版

データで楽しむプロ野球

FanGraphs Baseball | Baseball Statistics and Analysis

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