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2020年戦力分析その8 ~横浜DeNAベイスターズ~

 日本ハムの栗山監督が今季からメジャーで導入されるワンポイント禁止というルールについて私見を述べたようですね(⇒日本ハム・栗山監督 「ワンポイント禁止」には否定的「日本らしい決定があっていい」)。個人的にはNPBには日本独自の面白い野球で観客を惹きつけてほしいので、現場からこんな声があって凄く嬉しいです。申告敬遠は比較的受け入れられている感じはありますが、このルール変更は時短という外面的な名目よりも選手の年俸や選手生命の長さ、ドラフトに直接関わってくるので、一年間熟考して賢明な判断をしてほしいです。そもそも野球は時間のかかるスポーツです。ファンの方はそういう面も含めて好きという方のほうが多いのではないでしょうか。前置きが長くなってしまいましたが、今回は戦力分析の8回目で横浜DeNAベイスターズの記事になります。どうぞご一読を。

 

1. 2019年シーズンの総括

 昨年の横浜DeNAベイスターズは、4月終了時点では借金7の最下位だったものの5月から調子を上げ4ヶ月連続の勝ち越し、最終的には2位に終わるという上々のシーズンでした。70年の球団史の中で2位以上はたった7回であることを考えると、相当な歴史的快挙ではないでしょうか。しかし、ラミレス監督がここで満足しているはずはありません。今年の優勝そして日本一へ向けて、どのような改善点があるか振り返っていきましょう。

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 まず投手陣ですが、昨年は今永投手が復活したことが一番ですね。あと少し勝利とイニングを積み重ねていたら、該当者なしとなった沢村賞の選考はもっと難航していたかもしれません。プレミア12にも出場しましたし東京五輪でも貴重なエース左腕としての役割が期待されていそうですが、怪我だけには注意してより一層の高みを目指してほしいですね。あとは、ルーキーの上茶谷投手がローテを守ったのも良かったです。先発投手がイニングをあまり食えない中で、自分の役割を果たせていた救援陣も悪くなかったと思います。

 一方、チームの防御率自体は先発救援ともにリーグ5位とあまり良くありませんでした。しかし、前年度に比べると防御率は改善(2018年:4.18⇒2019年:3.93)していますし、前年度新人王の東投手や三上投手らが戦列を離れていたことを考えるとよくやり繰りした一年だったと言えるかもしれません。球威のある中継ぎ投手を先発投手として起用する「オープナー」もセ・リーグの他球団に先んじて試していましたし、CSではエースの今永投手を中継ぎとして待機させるなど常識にとらわれない采配も健在でした。近年の投手重視のドラフト戦略で使える投手は確実に増えてきていると思うので、今季こそは怪我による離脱者の少ないシーズンにしてほしいですね。

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 ファンの方々はよく知っていると思いますが、今季の優勝へ向けて最も克服すべき点は2014年から負け越しが続いている阪神への"アレルギー"でしょう。ラミレス監督になってからの対戦成績も35勝62敗3分け(勝率.361)と莫大な借金を作っており、上位進出を阻んでいる存在であることが分かります。昨年の対戦防御率を見るとそこまで悪くないのですが、守備の乱れや拙攻もあって白星を取り逃がしています。今季は守備で落とす試合をまずは減らしたいですね。阪神打線はDeNAの投手からは万遍なく打っているので厄介なのですが、2015年からの5年間で21本84打点を許している福留選手はそろそろ攻略したいところです。苦手だった交流戦も昨年は勝ち越せたので、どうにかしてこの負の連鎖を断ち切ってほしいですね。他のチームでは坂本選手(対戦打率.389)に打たれすぎてしまった対巨人戦も要反省です。負け越したチームに対してはQS勝率が低い傾向にあるので、QSしてくれた試合を落とさないようにする救援陣の粘りが重要になってきそうです。

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  次に野手陣は、チーム得点数とチーム本塁打数がともにリーグ3位とまずまずという結果でした。打線のMVPは、やはり二年連続の本塁打王に加え打点王も獲得したソト選手でしょう。右翼と二塁を守るユーティリティぶりを見せながら打撃面の成績も残してくれるのは非常に有り難いですし、ここ二年不調が続いている梶谷選手の不在も感じさせない大活躍をしてくれています。また采配面では、ラミレス監督の十八番となった「八番投手」や宮﨑選手が8月に離脱した際の二番サード・筒香など昨年も野球ファンを驚かせてくれました。4月に絶不調だった宮﨑選手を信じて使い続けたのも良かったですね。

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 一方で上記の得点貢献(灰色の棒)のグラフを見ると、上位打線ではソト選手や筒香選手、ロペス選手がプラスとなっている反面、半分以上は一番に定着していた神里選手は微マイナスとなっており、十分な得点貢献ができていなかったことが分かります。これはタイムリーが少なく、足を使った野球があまりできていないことが原因です。ホームランを期待できる打者が多いのでこのスタイルでも良いかもしれませんが、より上位を目指すためには得点パターンをもっと増やしておきたいところです。二番に宮﨑選手やソト選手を置く打順も良いですが、打線の機動力を高めるためにもう少し足の速い打者がほしいと思えるようなデータになっています。

 

2.2019-2020シーズンの選手の動き・新戦力分析

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 今季へ向けて最も変わることは、筒香選手が居なくなるということに尽きるでしょう。毎年130試合、25本、80打点は最低限計算できた筒香選手の穴はとても大きいですが、先程の得点貢献のグラフを見るに神里選手や宮﨑選手などは100%の力を発揮できていないように思えるので、まずは現有戦力の成績向上に期待したいですね。そして、新外国人野手としてはタイラー・オースティン選手を獲得しています。どんな選手なのか、近年の成績を見てみましょう。

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 オースティン選手は今年29歳になる右打者で、2018年にはメジャーで268打席で本塁打17本、OPS.767をマークしたこともある選手です。昨年は3球団を渡り歩いて打率.188に終わってしまいましたが、長打力はお墨付きといったところでしょう。本職は一塁手なので今年37歳になるロペス選手のバックアップもできますし、メジャーで左翼を守った経験もあるので筒香選手の穴を埋める存在としても期待されます。三振率がかなり高いのは心配ですが、三振が多くても良い打者はたくさん居るので、日本で成功してほしいですね。

 一方、新外国人投手としてはマイケル・ピープルズ投手を獲得しています。こちらは昨年3Aで144.2イニングを投げ10勝、防御率3.98をマークしており、先発としての起用が予想されます。外国人枠はきついですが、今年は長いシーズンですし離脱者も少なからず出てくると思うので、必ずある先発の出番でアピールしてほしいですね。

 ドラフトでは注目の高校生、森敬斗遊撃手を一本釣りしたほか、坂本裕哉投手など即戦力投手も獲得しています。坂本投手は先発ローテとして期待できるということなので、新人王も目指して頑張ってほしいですね。

 

3. 2020年の戦力分析・オーダー予想

 それでは最後に、今年の投手陣と野手陣の予想布陣を見ていきましょう。

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 前回と同じように、上の表のlastIN、lastGはCSも含めたイニング数、登板数を示しています。先発陣は昨年と同様に今永投手、上茶谷投手、濵口投手の3人が軸となっていくのが理想形です。濵口投手は入団以来イニング数が減っていっていますが、QS率と完封数が示すようにポテンシャルの高い投手なので、なんとか上茶谷投手とともに初めての規定投球回を達成してほしいですね。次に石田投手は昨年は中継ぎメインで結果を残しましたが、やはり長い回を投げ切る力のある投手なので先発ローテとして期待したいです。この4人が頑張ってくれれば救援陣はだいぶ楽になるでしょう。これに加えて平良投手、ドラフト2位の坂本投手、外国人枠を見てピープルズ投手らが入ってくる感じになるでしょうか。左肘の違和感が続いている東投手もなんとか一軍に上がってきて、近年の"ドラ1揃い踏み"となるところも見てみたいですね。実現すれば、優勝も近いはずです。

 勝ちパターンは昨年と同じ投手に任せることになりそうですが、心配なのは勤続疲労です。特に東京五輪にもほぼ確実に招集されそうな山﨑康晃投手は、入団以来毎年60試合前後を投げており相当な疲労が溜まっていることが想像できます。山﨑康晃投手が離脱でもすれば、一気に試合終盤の厳しい局面を凌ぐことが難しくなってくると思うので、三嶋投手やエスコバー投手も含めて負担を分散させる投手起用をしてほしいですね。

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 次に野手陣は、ラミレス監督は非常に多様な打順を考えてくるのでオーダー予想は難しいのですが、昨年組まれたオーダーに基づいて3パターン考えてみました。まずは昨年のCSでのオーダーをもとに、三番に宮﨑選手、五番に佐野選手を左翼で起用したのがパターンAです。佐野選手のところは、左翼経験のあるオースティン選手にしてもいいかもしれません。投手がゴロボールピッチャーで内野守備が大事なときなどはこのオーダーが一番攻守のバランスが良い気がします。

 また、外野守備をより固めたい場合は、パターンBのようにソト選手を左翼手として起用するのもいいかもしれません。この場合は、昨年57打席ながらOPS.929と確かな結果を残した伊藤裕季也選手を五番セカンドで起用するのも良さそうですね。

 パターンAでオースティン選手を左翼手として起用した際に両翼が外国人選手になってしまうのを避けたい場合は、パターンCのようにソト選手を二塁手として起用するオーダーも考えられます。なお、パターンBとパターンCでは空いた右翼手に近年結果を残せていない梶谷選手を抜擢していますが、これは筒香選手の穴を埋められる選手は彼しかいないという期待を込めてのものです。パターンCのようにある程度の出塁率が計算できて足もある梶谷選手が一番打者として復活すれば、神里選手とともに足を活かした攻撃も可能になり得点が増えてくると思うので、是非今年は元気な姿を見たいですね。

 そんな梶谷選手を始め、数年前までレギュラーだった桑原選手や倉本選手もまだ負けてはいられないはずです。ソト選手だけは外せませんが、二塁と外野はある程度流動的になっているポジションなので、佐野選手なども含めてオープン戦から激しいポジションの奪い合いを期待したいですね。彼らが頑張ることが日本一への一番の近道です。

 

4. 終わりに

 以上、今シーズンの横浜DeNAベイスターズの戦力分析でした。ラミレス監督も今季で5年目と長期政権になってきました。親会社が変わってからのドラフト戦略も着実に実ってきているので、筒香選手が抜けたという逆風を吹き飛ばして優勝してほしいですね。

 次回は、シーズン終盤に3位に滑り込んだ阪神タイガースの記事になります。それではまた。

 

5. 参考サイト

NPB.jp 日本野球機構

プロ野球 - スポーツナビ

日本プロ野球記録

データで楽しむプロ野球

- nf3 - Baseball Data House Phase1.0 2019年度版

FanGraphs Baseball | Baseball Statistics and Analysis