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2020年戦力分析その10 ~広島東洋カープ~

 自身も巻き込む三角トレードが破談となっていた前田健太投手は結局ツインズへトレード移籍となりましたね。本拠地のあるミネアポリスは冬はとても寒いところなので最初は環境への適応にも苦労しそうですが、先発としてまずは一年間役割を全うしてほしいです。新しいチームメートとともに秋にロサンゼルスへ戻ってこれるような充実したシーズンにしてほしいですね。今回は戦力分析の10回目で、昨年セ・リーグ4位に終わった広島東洋カープの記事になります。どうぞご一読を。

 

1. 2019年シーズンの総括

 昨年の広島東洋カープは、5月の20勝で一時期は首位に立ったもののその他の月は全て負け越して4位に沈むというシーズンでした。主力中堅手だった丸選手の移籍やバティスタ選手のドーピング違反など昨年の成績の要因となるところはいくつか挙げられるのですが、具体的にどのような良い点・悪い点があったか振り返っていきましょう。

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 まずリーグ1位の防御率だった先発陣は今年もジョンソン、大瀬良の二枚看板がチームを引っ張ってくれました。中でも大瀬良投手は、チームでは前田健太投手以来となる三年連続での規定投球回到達を達成し、エースとして頼りになるところを見せてくれました。また、三年目の床田投手が不調による短期間の離脱はあったとはいえローテとして一年間を投げ切り、良い成績を残したのも良かったですね。毎年120イニング程度を投げてくれる九里投手の存在感も日に日に強まっています。彼が4、5番手に居てくれるのが今の広島先発陣の強みと言えるでしょう。

 一方で救援陣は、前年度までセットアッパーだったジャクソン投手と不調でクローザーの座を剥奪された中﨑投手の穴埋めに苦労するシーズンでした。フランスア投手と菊池保則投手などの活躍で防御率もリーグ3位と一応体面は保ったものの、レグナルト投手や一岡投手の後半戦の不調など今シーズンへ不安が残る要素もありました。中﨑、今村、一岡ら三連覇を支えた救援陣の不調をカバーする新しい戦力の台頭・成長が今季は欠かせません。

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 他球団との相性を見ると、同一リーグで大きく負け越した球団は無くシーズン後の印象ほど悪いシーズンでもなかったことが分かります。そうなると最も反省すべき点は、最下位だった交流戦でしょう。交流戦ではQS率もQS勝率も今年のカープにしては低めで、投打が噛み合いませんでした。これで二年連続負け越しとなり、三連覇を経験した若い選手にもパ・リーグの球団への苦手意識が芽生えつつあります。悲願の日本一のためにも、今季は最低でも勝ち越しを目標に意識改革をしてほしいですね。セ・リーグでは、負け越したDeNAと阪神の打線のほか、失点が多かったヤクルト打線にも要注意です。特に10本塁打、27打点を許した村上選手はこのまま大打者に育たれるとかなり厄介なので、的確に弱点を突くピッチングをして打ち取っていきたいところです。

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 次に野手陣は、チーム得点数が4年ぶりに600得点を割るなど三連覇の原動力となっていた打撃力の低下を感じずにはいられないシーズンでした。丸選手の移籍はもちろんですが、正遊撃手で一番打者の田中広輔選手の絶不調が痛かったですね。遊撃手としてフルイニングで出場し続けた代償だと思いたいですが、この調子がこのまま続くようなら今年も得点力不足に苦しむことになりそうです。

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 得点貢献のグラフ(灰色の棒)は2018年の分(上)と2019年の分(下)の二つを載せています。この二年分を比べてみても、西川選手のコンバートで中堅手の穴は埋められたものの西川選手が元々居た三塁手の穴は埋められず、結果として丸選手が移籍したダメージを大きく受けているというデータになっています。34歳となった松山選手が成績を大きく落としてしまったのも気になりますが、今季へ向けての一番の懸案事項はドーピング違反により6ヶ月間の出場停止処分を科されたバティスタ選手の今後の処遇でしょう。ドーピングは真剣勝負の場であるプロ野球の理念やファンの信用に背く最悪の行為ですし、NPBの今までのスタンスからすれば意図的摂取であれば球団も相応の処分を課すべきです。一方で外国人選手には育ってきた環境や文化もありますし、故意の摂取でないならば更生の場を設けるべきだという考え方もできます。現在も未契約ということなので今年どうなるかも不透明な状況ですが、広島が復帰の場を設けるならばそれ相応の対応をしてほしいですね。

 

2. 2019-2020シーズンの選手の動き・新戦力分析

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 昨年のドラフトでは大学No.1投手の森下暢仁投手を一本釣りしたほか、ドラフト2位で宇草孔基外野手を指名し、即戦力選手の補強を行っています。まずは開幕一軍を目標に、怪我せず充実したキャンプを送ってほしいですね。外国人では昨年の終盤の成績の悪さのため戦力外となったレグナルト投手に代わり、DJ ジョンソン投手、テイラー・スコット投手の二人の中継ぎ投手を補強しています。スコット投手はNPBでは初となる南アフリカ共和国出身という異色の選手なので、是非NPBで成功して母国の名を野球でも日本に轟かせてほしいですね。また、新外国人野手としてはホセ・ピレラ選手を獲得しています。どういう選手なのか、近年の成績を見てみましょう。

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 ピレラ選手はベネズエラ出身の今年31歳になる右打者です。メジャーでは2017年にパドレスで344打席で本塁打10本、OPS.837という成績を残しています。昨年はパドレスとフィリーズの3Aで合計本塁打22本、OPS.973という好成績を残しました。守備位置は二塁と左翼、右翼を守ってきた選手なので現状では左翼手としての起用が予想されますが、春季キャンプでは三塁でノックを受けているので佐々岡新監督らは三塁メインでの起用を考えているのかもしれません。ある程度長打力が期待できる選手がサードに入ってくれれば打線の厚みもぐんと増すので、守備力のあるところを見せてほしいですね。

 

3. 2020年の戦力分析・オーダー予想

 最後に、今年の投手陣と野手陣のメンバー予想を見ていきましょう。

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 先発陣は、大瀬良、KJ(クリス・ジョンソン)、床田の三人が今年も中心になっていくでしょう。彼らに加え、先発として年々ステップアップしてきている九里投手が規定投球回程度を投げ切れば、Aクラスは固いはずです。さらに残りの枠をドラフト1位の森下投手、野村投手、アドゥワ投手、薮田投手らで争うこととなるので、例年以上に先発ローテーション争いは激化しそうです。長い回を投げることのできる強い先発が居ることが広島の良い伝統だと思うので、分業化が加速している現代の野球の中でもチームカラーを失わずに勝っていってほしいですね。

 勝ちパターンは昨年終盤のようにフランスア投手、菊池保則投手、中村恭平投手に任せる形になるでしょう。しかし、その前を投げる投手として適当な選手が居ません。ここは三連覇に貢献した中﨑、今村、一岡らの復活を期待するとともに、先発から中継ぎへ配置転換となる岡田投手や新加入の外国人投手のアピールにも注目です。短期決戦も考えると使える救援陣の枚数が多いに越したことはないので、ハイレベルな争いを見たいですね。彼らの頑張り次第で日本一が見えてきます。

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 野手陣の予想オーダーは、主に外国人選手をどう使うかによって3パターン考えています。まずパターンAは、ピレラ選手を三塁手、メヒア選手を一塁手として使うオーダーです。全員が持っているポテンシャルを発揮すれば八番まで二桁本塁打が期待できそうですし、打線の破壊力を考えるとこのオーダーが最も良いような気がします。ピレラ選手が三塁を守れないなら、パターンBのような守備位置になるでしょう。この場合は松山選手とメヒア選手が一塁手を争う形になります。攻守のバランスを考えると、こちらのオーダーのほうが良いでしょうか。パターンCは出場停止処分を受けているバティスタ選手の契約次第ですが、松山選手とバティスタ選手を競わせるオーダーです。私はドーピングが故意ではないならば永久追放のような扱いをしてしまうのはかわいそうだと思うので、ドーピング違反者として復帰する段階をきちんと踏んだ後にまたチャンスを与えてほしいです。いずれにせよ、出場停止処分が明ける3月3日以降のカープの判断を待ちましょう。

 パターンAとパターンCでは、田中選手の復活を期待して一番・遊撃手として起用しています。パターンBのように小園選手をショートに抜擢するオーダーも良いですが、やはり三連覇できたのは田中選手の出塁力と生還力があってのことだと思うので、佐々岡監督も十分にチャンスをあげてほしいですね。今年の広島の順位は彼次第と言ってもいいです。

 田中選手が2018年以前の成績を取り戻せたなら、パターンCのような一番・田中、二番・西川として下位打線に菊地選手を置くオーダーも組めます。以前のように三割を打てるなら上位でもいいですが、個人的には出塁率は低いがある程度長打を期待できる菊地選手は二番よりも下位に置いて自由に振らせる方が得点が増えると思うのですが、どうでしょうか。

 

4. 終わりに

 以上、今年の広島東洋カープの戦力分析でした。今季から指揮を執る佐々岡監督は球団ではかなり久しぶりの投手出身監督となります。先発も抑えも経験のある珍しい監督なので、その経験を活かした采配や投手運用にも要注目です。

 この戦力分析の記事も残すところあと二回となりました。次回は昨年5位に終わった中日ドラゴンズの記事になります。それではまた。

 

5. 参考サイト

NPB.jp 日本野球機構

プロ野球 - スポーツナビ

データで楽しむプロ野球

- nf3 - Baseball Data House Phase1.0 2019年度版

FanGraphs Baseball | Baseball Statistics and Analysis