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プロ野球16球団構想を考える ~日本全国球場行脚~ 第四回(最終回) 周辺人口、アクセスなどデータまとめ

新型コロナウイルスの影響でセンバツの中止が決まりましたね・・・出場が決まっていた高校は、本当にかわいそうです。東京五輪の今年の開催も危ぶまれており、何もかもが不透明な状況で前向きになるのは難しいとは思いますが、この悔しさ、無念さを少しでも晴らせるシステムを今年は高野連側も用意してほしいですね。ただ高野連側も重い決断だったと思うので、どうか夏までには収束ムードが高まることを祈るばかりです。今回はプロ野球のエクスパンションを考える記事の最終回(過去記事は以下のリンクからどうぞ!)になります。お暇な方は、ご一読を。

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1. 本拠地候補地の本拠地としてのポテンシャルを考える(再考)

ここからはこれまで3回に渡って見てきた本拠地候補各球場と現在の本拠地、準本拠地の各球場についてまとめた散布図データをテーマごとに数点見ていくことで、各球場の本拠地としてのポテンシャルを再度考えていきます。分かりやすさを重視するため、各球場の名称は必ずしもネーミングライツでの名称とは限らず一般的に用いられている通称で表記しています。それでは詳しく見ていきましょう。

◇電車・車を利用して球場へ行ける市区町村の総人口

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まずは各球場のデータにある「1h電車通勤圏内人口」(横軸)と「30min車通勤圏内人口」(縦軸)のデータをまとめた散布図になります。見にくいですが、右下にそれぞれ200万人以下に収まっている球場のデータを拡大図で示しています。これを見ると、東京都心にある東京ドームを筆頭に、新宿や渋谷に近い副都心と大阪、横浜にある球場、そして千葉や埼玉の都心近郊部、名古屋にある球場が綺麗に続いていることが分かります。球場の解説でも言及しましたが、人口約131万のさいたま市を"保護地域"とする県営大宮球場20,500人と少ない収容能力の問題さえクリア出来れば、西武球団とは別の新たな新球団の本拠地としても十分ポテンシャルが見込める球場と言うことができます。

これらの県営大宮球場を含めたある程度の"都会"にある球場に続き、京都・神戸・福岡・札幌の球場が続きます。オリックス・ブルーウェーブの優勝と日本一を支えた神戸総合運動公園野球場が十分に本拠地として機能したように、阪急沿線で同等以上のファンが見込める京都の西京極球場今でも本拠地として機能する可能性がある球場の筆頭候補です。こちらも20,000人と少ない収容能力を拡張すれば、2.5~3.0万人の動員を記録する球場になるポテンシャルを秘めているのではないでしょうか。これをきっかけに同球場を本拠地とする女子プロ野球に興味を持つ新たな企業が現れるという相乗効果も期待できるかもしれません。

一方、札幌市内から20km以上と遠い日本ハムの新本拠地・北海道ボールパーク(通称:エスコンフィールド北海道)はイレギュラーな存在です。電車で1時間以内に球場に"行ける"市の総人口では北広島市・恵庭市・千歳市の3市を取り入れたことで札幌ドームを上回っていますが、必ずしもJR千歳線沿線に人口が集中しているとは言えないため、少し遠くからでも地元のファンが行きたいと思えるような球場にすることが移転成功への第一条件になってくるでしょう。新千歳空港駅から40分強と近くなる遠征組にとっては通いやすい球場にはなりますが、メインターゲットは200万人近く居る札幌市内のファンなので、札幌市街地とはちょっと違う雰囲気を味わえるような街になって今のファンを満足させてほしいですね。

その他の球場は、電車で1時間以内、車で30分以内に行ける市町村の総人口が双方とも200万を切っている球場になっています。70年近く広島を保護地域としているカープ、そして今年16年目に入る東北楽天は、新規参入を目指す企業にとってどこを本拠地球場とするかというバロメーターになる球団です。特に楽天の本拠地の宮城球場よりファンを見込めない球場は、周辺人口の面からは球団運営は厳しいということが言うことができるのではないでしょうか。電車で球場に行ける市町の総人口では宮城球場を上回る倉敷・マスカットスタジアムが最低ラインと言えそうです。

◇電車でのアクセス

次は、観戦時に最も多い移動手段である電車でのアクセスの良さを見ていきます。

※主要駅、移動時間などの条件変更のため、一部修正(2022/11/22)

横軸が各球場のデータでも示した最寄り駅からの徒歩(時速4km)での時間縦軸が私が設定した最寄り主要駅から最寄り駅までの電車での時間になっています。最寄り主要駅名と球場名内の地域名が合致しない球場は下に最寄り主要駅を明記(特に注意が必要なものは赤で表記)しています(※最寄り主要駅は私個人のある程度恣意的な判断に基づいて選んでいるので、実際の事実とは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

このグラフを見ると、赤太字で示している現在の本拠地球場はどの球場も最寄り駅から20分以内と相応に電車で行きやすい立地にあることが分かります。2023年から日本ハムが移転する北海道ボールパークは最寄りのJR北広島駅から26分程度(仙台駅から宮城球場までと同じくらい)であることから、新規参入を目指す企業にとってはこの最寄り駅から徒歩25分(約1.7km)というところが一つの目安になります。これと主要駅からの近さを考えると、最寄りのJR市坪駅から降りてすぐ、JR松山駅から電車で5分という好立地にある坊っちゃんスタジアムが候補地筆頭に挙がります。松山城下の市街地や道後温泉からも遠くなく、新球団の本拠地となれば野球と歴史や観光が融合した新しい球場になりそうで、夢があります。続いて小倉駅からモノレールを使って15分の北九州市民球場、那覇空港や市役所から近い沖縄セルラースタジアム那覇が候補になります。どちらも中心市街地から15分程度と近く、その地域の野球熱次第では年間100万人を優に超えるファンを集めるプロ野球ビジネスが成立するかもしれません。そして最寄り駅から徒歩10分程度、主要駅から30分以内という条件を満たす倉敷のマスカットスタジアム静岡草薙球場、京都・西京極球場が続く候補地になります。マスカットスタジアムは山陽本線の駅近くにあるので、遠征に来るファンも安心です。静岡駅からの直通路線がある静岡草薙球場、中心繁華街のある四条河原町から阪急に乗るだけで良い西京極球場も立地面では負けていませんその次は準本拠地である県営大宮球場神戸総合運動公園野球場に続いて主要駅から30分前後の鹿児島県立鴨池球場、熊本の藤崎台県営野球場浜松球場が続きますが、どの球場も最寄り駅から15分以上と現在の福岡ドームや千葉マリンスタジアム並みかそれ以上の距離を歩かねばならないことが難点です(鴨池球場と藤崎台球場は各球場のデータに示した駅よりも近い最寄り駅がありますが、主要駅からは市電の乗り換えが必須で、そこへ行くまでにより時間がかかってしまいます)。特に敗戦時などは長い距離をとぼとぼ歩くのは辛いですよね。とはいえ市街地には比較的近い球場ではあるので、これら3球場がアクセス面を見た場合の最低ラインと言うことができそうです。

◇直近5年間の平均観客動員数と周辺野球ファン人口

最後は平均観客動員数と周辺人口のデータです。

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縦軸の「5年間の平均観客動員数」は各球場のデータでも示している2015~2019年シーズンの間の平均観客動員数で、横軸が「1h電車通勤圏内人口」と「30min車通勤圏内人口」に該当する市区町村(どちらか一方で良い)の総人口を10で割ったものになっています。これは、"10人に1人くらいは少しは野球に興味があるのではないか"という推測に基づいて導き出したもので、球場周辺の推定野球ファン人口を示しています。実際に10人に1人ファンが居るかどうかは分からないので、「それだけ人が居るんだな」ということを表すものと思っていただいて構いません。

赤字の本拠地球場を見ると、東京ドームの圧倒的な周辺人口と動員数が分かります。東京ドームは巨人戦だけではなくパ・リーグ主催の試合も含めた平均動員数を出していますが、それでも1位です。築30年を超えてきたこのドームがいつまで持つかは分かりませんが、ジャイアンツがもし移転を考えるならアクセス面で東京ドームに引けを取らないそれなりの代替地を探す必要がありそうです。

次に平均動員数が多い甲子園は周辺人口では東京ドームに劣りますが、熱狂的なファンの多さから動員数を維持しています。野球ファンでも観戦に出向くファンが多いということですね。名古屋、福岡、札幌、広島、宮城と地方に行くにつれてこの傾向は強くなっていき、野球観戦がエンターテイメントの主幹部分を担っていることが見て取れます。一方、神宮球場や大阪ドームと言った都心部に位置する球場は周辺人口100万人以上と恵まれた立地を活かしきれておらず、まだまだファンを獲得する余地があると言えます。球団のやる気次第では、昨年30,000人を超える平均動員数を達成した横浜スタジアムに続くようなポテンシャルを秘めているのではないでしょうか。都心近郊の西武ドーム、千葉マリンスタジアムも同様です。ここ5年で12球団合算で年間250万人近く増えた野球観戦人口を胸に、各球団とも魅力ある球団、球場づくりに邁進してほしいですね。

 本拠地球場の現状が分かったところで、主題の地方球場の本拠地としてのポテンシャルを見ていきましょう。動員数で目立つのは、やはり倉敷のマスカットスタジアムでしょうか。ほとんどが隣の兵庫県を保護地域とする阪神戦であり基本的に年一回の開催ではありますが2011年からの9試合で平均動員29,000人台を維持しており、野球熱があります本拠地とするならば継続的に人を呼べるかというところも大事になってくるとは思いますが、現時点で現在の本拠地球場に匹敵する動員数をマークし続けていることは大きな強みです。

平均動員数で倉敷に続くのがハードオフエコスタジアム新潟長野オリンピックスタジアムの2球場です。少ない試合数ながら、2万人を超える、10万人を割る周辺ファン人口からは想像もつかないほどの平均動員数を記録しています。地理的条件からアクセスの面では他球場に並ぶことは難しい両球場ですが、いずれも対巨人戦のカードでは25,000人におよぶ動員数を記録したことがあり潜在的に野球熱が盛んな地域であることが見て取れます。プロ野球誘致も目指す新潟は、今年は非巨人戦のカードとしてDeNA対ヤクルト三連戦が組まれており、本拠地としてのポテンシャルを外に向けてアピールする大事な試合になります。注目したいですね。

本拠地経験が無く、平均動員数20,000人を超えている本拠地候補球場としては他に北九州市民球場があります。ここはマスカットスタジアムに次ぐ収容率(=平均動員数/収容人数)をマークしており、周辺人口では上回っている新潟や長野の動員数や地元のホークスファンの根強さを考えると年1~2試合とはいえもう少し収容人数が多くても良い気がするのですが、増席する余裕などはないのでしょうか

これらの球場とは対照的に、「野球ファン(人)は居るのに動員数がもうひと伸び足りない」と言える本拠地候補球場が京都・西京極球場です。前述の収容人数の問題もあるとは言え、阪急沿線の人口から考えると動員数が物足りません。ただこの球場についてはファンの多い阪神が倉敷を注視しており、プロ野球全体でもここ22年では6試合と京都のファンを遠ざけてきた歴史があるので、現在の野球熱が盛り上がっていなくてもやむを得ないと言えるかもしれません。しかし今年も(昨年は中止になった)オリックス戦二連戦が組まれており、オリックスが準本拠地としてターゲットにしつつあるので、盛り上がっていってほしいですね。

あとは右下に拡大図で示した平均動員数20,000人、周辺ファン人口12万人を割る球場になります。宮城球場の周辺ファン人口が約14万人であることを考えると、ここに入ってしまう球場は(公式戦継続に必要な)2万人程度の動員数を継続して維持していくのは現状では厳しいのではないでしょうか。ただ長野や新潟のような周辺人口が少なくても野球熱の高い地域もあるので、静岡草薙球場あたりはギリギリ可能性があります。このあたりが最低ラインと言えるでしょう。

 

2. 海外リーグを参照する

日本の本拠地候補地について復習できたところで、次は海外リーグを見てみます。今回は、MLBとKBOのリーグの動員数と各球団本拠地周辺の人口を見ていくことで、新球団としての最低ラインを見極めていきます。まずはMLBです。

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散布図のラベルは球場名ではなく、球団名(都市名)になっています。縦軸は先程のNPBの散布図と同じですが、横軸はMLBの本拠地球場へのアクセス手段を調べていないので、その球団、その球場が位置するアメリカの都市圏(大都市統計地域:MSA)の人口を10分の1にすることで球場周辺の推定野球ファン数を出しています。なお、メジャーリーグでは基本的には本拠地で試合を行うため、地方球場や他の国々での試合は滅多に行われないと思っていて良いです。日本での開幕戦や、この間のロンドンシリーズは特別ですね。

それでは見ていきましょう。まず目立つのが、ニューヨーク・ロサンゼルス・シカゴの三大都市にある球場周辺の人の多さです。ここらへんは東京・大阪・横浜に人が集中している日本と似ているところがありますただヤンキース【NYY】とメッツ【NYM】、カブス【CHC】とホワイトソックス【CWS】の球場は9マイル(約15km)以下の距離で比較的近いのですが、大谷翔平選手が所属するエンゼルス【LAA】の球場はドジャース【LAD】の本拠地、ドジャー・スタジアムがある州の中心部からは30マイル近く(約50km)も離れたアナハイムにあるため、周辺人口はこの散布図に表示したものよりも少ないと考えられます・・・車社会だから関係ない??)。そしてこの三大都市圏にある球場以外は周辺ファン人口60万程度以下の"地方"に散らばっています。国土の規模は全く違いますが、ここも日本と同じですね。

そんな"地方"で特に人気がある球団がカージナルス【STL】、ジャイアンツ【SF】、レッドソックス【BOS】です。どの球団の球場もこの5年間の収容率90%を達成しており、野球が根強い人気を得ていることが分かります。これに5万人規模の本拠地を持つロッキーズ【COL】とブルージェイズ【TOR】や、ブルワーズ【MIL】、アストロズ【HOU】、ナショナルズ【WSH】が3万人の平均動員数を記録している球団として続きますホワイトソックスを除くここまで挙げた13球団がこの5年間で3万人を超える動員数を維持している「安定した」球場になります。

今度は下を見ていきます。日本と同様、平均動員数2.5~3.0万人台を維持している9球団は手堅い人気を得ていると見ていいでしょう。その下のパイレーツ【PIT】、レッズ【CIN】、オリオールズ【BAL】、インディアンス【CLE】も周辺人口の割りには頑張っています問題は、動員数2万人を割るアスレチックス【OAK】、マーリンズ【MIA】、レイズ【TB】の3球団と、大都市にあって人気を得ていないホワイトソックス【CWS】しょうか。この4球団が日本でエクスパンションを進めるにあたり、現在参考にしなければならない球団、球場になっています。

次は、KBOを見ていきます。KBOのファン人口は球団、球場が位置する市の総人口から求めています

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※ソウル特別市のキウム・ヒーローズは2018年までネクセン・ヒーローズ
※仁川広域市のSKワイバーンズは球団売却により2021年から「SSGランダース」に改称している

KBOは今世紀に入って以降の段階的なエクスパンションを経て10球団制となってから5年ですが、平均動員数を見るに、プロ野球観戦の人気は盛り上がっているとは言えません。新興球団であるKTやNCの動員数が少ないのは仕方ないですが、歴史の長い球団であるサムスンやハンファなどの平均動員数も1万人を割っているという厳しい状況です。東京23区とほぼ同規模の都市である首都ソウルにある国を代表する球場・蚕室野球場を本拠地とする斗山やLGでも平均動員数は1.5万人台に留まっており、26,000人規模の収容能力を持て余しています。日本と韓国の根本的な人口差を考えるとこの平均動員数でもよくやっていると言えるかもしれませんが、動員数推移を見ても都市部のチームを中心に2015年以降減っている球団が多く、国の人口が限られている中で球団数を増やすということがもたらす悪影響(飽和状態のような感じ)の方を強く感じてしまうデータになっています。KBOのエクスパンションは、本当に正しかったのでしょうか

 

3. 総括と私見

以上の海外の球場のデータを併せて見ると、平均動員数1.5万人かつ周辺ファン人口15万人というところが新球団の本拠地として求められる最低ラインと言うことができそうです。今回取り上げた近年プロ野球の公式戦開催が比較的多い球場の中で、この条件を満たせそうなのは、準本拠地も含めると神戸総合運動公園野球場県営大宮球場京都・西京極球場倉敷・マスカットスタジアムの4球場になります。保護地域が被るのを嫌うなら、周辺ファン人口が10万人規模の北九州市民球場静岡草薙球場浜松球場、熊本・藤崎台県営野球場も候補と言えば候補ですが、やはりファンを集め続ける継続力の点でこの4球場に劣りますハードオフエコスタジアム新潟沖縄セルラースタジアム那覇は地域を挙げて本拠地誘致活動をしていますが、同様の理由で現状では厳しいと言わざるを得ません。前者は陸路、後者は空路でのアクセス面の悪さも付いて回りますし地区制などの地理的問題を解消するシステムが構築されない限り、新球団の誕生は現実味がありません。地区制にしてリーグの球団数を減らしてしまうと、一番大事なレギュラーシーズンの面白みが損なわれますし、また別の議論も必要になってきそうです。これらを鑑みても、神戸大宮京都倉敷の4つは本拠地としてのポテンシャルで他を凌駕していると言うことができるでしょう。

さて、これらの地域にまず一つの新球団が発足したとしても、多くの課題があります。最も大きな課題が、選手をどこから供給するかという課題でしょう。球団を"増やす"ので、消滅した近鉄と入れ替わりで誕生し、分配ドラフトという形で近鉄とオリックスから40%程度の選手が分け与えられた楽天とは訳が違います。その年の新人選手や戦力外になってしまった選手を集めたとしても楽天が集めてきた20人くらいが関の山でしょう。外国人を含めても30人に届かない程度です。これではチームとして成り立ちません。60人以上のプロ野球球団を運営するには、外国人枠を緩和したり、ドラフトの段階で支配下戦力になる選手を見定める基準を下げるといった措置が必要になってきます。

次にプロチームとして、既存球団とのレベル差にどう対処するかという課題があります。上述したような選手の供給のされ方では新球団の下位低迷は必至で、田尾監督時代の楽天が経験したような、あるいはそれ以上の苦渋を何年にも渡り味わうことになります。あまりにも戦力格差がありすぎると観客は離れていきますし、心身ともに選手側のモチベーション維持も難しいでしょう。1950年代の2リーグ制黎明期のようにトレードなどで有力選手を既存球団から引っ張ってきて、全体のレベル差をならすことができれば良いのですが、野球観戦が根付いた現在では元の球団とファンが許しませんよね。他には外国人枠を緩和あるいは撤廃するという方法ありますが、海外選手にとっては特殊な環境でありレベルの高いNPBで通用する選手はそれなりに素質のある選手だと思いますし、そんな選手が継続して日本にやってきてくれるとは思えません。外国人を増やせば通訳など生活をサポートするスタッフもそれだけ必要になってきますし、その点も心配です。

最後は、興行面です。神戸や大宮はもちろん、京都や倉敷も他競技や既存の球団のファンが根強いため、強くない新興球団が真新しさだけで人気を得ていくのは相当難しいでしょう。加えてチーム力や人員不足の解消のため外国人枠を拡張して外国人主体のチームになると、私個人の所感では、言語体系が特殊で島国気質の日本のファンの人気を得ていくのは更に厳しくなるように思います。やはり贔屓球団を持つファンの方は、野球というだけで試合を観に来ている訳ではなく、野球をする選手個人に興味を持って観に行く人がほとんどだと思うので、人気選手を引っ張ってくるフロントの政治力や実力の伴わない選手のプロデュース力、それを可能にするある程度の資金力が無ければ動員数を維持するのはなかなか難しいのではないでしょうか。

このように、一つ球団を増やすだけで解決できるとは思えない問題がたくさん出てきます。これらの理由から、私はNPBのエクスパンションには反対です。確かにエクスパンションによって野球に興味を持つ機会を多くし、野球人口減少の緩和や地域活性化を図るのは今後の野球界を盛り上げるための一つの策ではあります。プロを目指す高校球児にとってはドラフトで指名される可能性が上がることがモチベーションになるかもしれません。しかし、やはり一定の観客動員があってのプロ野球なので、勝敗の分かり切った試合やシーズンが続くようであれば長期的に見れば現在KBO(やMLB)で起きているような野球観戦人気の低下にも繋がりかねません。そうなった後に12球団制に戻そうと思っても難しいですし、逆にNPB自らの首を締める結果になる可能性も大きいです。

制度を大きく変えることが改革と思う人がいるのかもしれませんが、実績のある現行法を時代に合う形で続けていくことも立派な改革です。現在のNPBが人気である理由の一つに「世界レベルで見てもそれなりにレベルが高い」ことがあると思うので、NPBにはMLBに匹敵する選手を有するリーグとして、日本野球の未来のためにも日本のトップリーグとして12球団制をこれからも続けてほしいです。いや、続けなければなりません。そして、MLBやKBO、その他の他国リーグとともに、WBCという世界大会を通じて「野球」というスポーツの面白さを長い時間をかけて世界に広めていってほしいです。

 

4. 終わりに

以上、NPBのエクスパンションを考える記事でした。今回は敢えて既存球場(しかもプロ野球開催歴の多い球場)に絞ったので、新たに球場が建設されることなどがあれば違った感想になるかもしれませんね(ただ、保護地域の被りや交通渋滞、二軍施設とのアクセスなどを考えると、あまり都市部に密集しすぎるのは良くないかもしれません)。

最後はエクスパンションに反対する旨を述べましたが、地方球場で積極的に試合を開催していること自体はNPBの良いところだと思うので、これからも続けていってほしいです。また、野球を続けるための受け皿として年々重要性を増している独立リーグの舞台としても地方球場は重要です。今年は新潟での三連戦があるほか、いわき市や福井市、宮崎市、水戸市などでも開催される予定のようですよ。そんな地方球場の試合も含めて、このコロナ禍の中、今年のプロ野球が無事開催されることを祈っています。私も今年はできる限り球場観戦をしたいです。今年もプロ野球観戦を楽しみましょう!

 

5. 参考サイト

NPB.jp 日本野球機構

乗換案内、時刻表 - Yahoo!路線情報

MapFan - 地図・ルート検索

プロ野球Freak

2020 MLB Attendance - Major League Baseball - ESPN

Google マップ

ストライク・ゾーン(KBO情報サイト)