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【2021年版】オリックス・バファローズ戦力分析

 今年もオープン戦が始まりましたね!昨日は3月から緊急事態宣言の対象地域から外れた大阪と福岡で試合が行われたため、ようやく有観客での試合を見られるようになりました。首都圏の宣言解除については審議が続いていますが、一刻も早く感染者数が微々たるものになり、正常の興行ができるようになってほしいですね。
 今回は2021年の12球団戦力分析の第六回で、昨年パ・リーグ6位に終わったオリックス・バファローズの戦力分析になります。どうぞご一読を。

 

1. 2020年の総括

シーズン成績

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 昨年のオリックスは最初の対ロッテ6連戦を全部落としてド派手に開幕逆噴射を決めたことで崩れたチーム状態を立て直せず、年間通して最下位のままシーズンを終えました。8月21日の中嶋聡二軍監督の監督代行就任時には既にロッテとソフトバンクを相手に借金17を作っており、首脳陣刷新を行った時にはもう手遅れの状態だったと言っていいでしょう。低迷の原因となった西村監督自身が前年度起用した選手を重用しがちで一軍実績の浅い選手に出場機会を与えない傾向にあり、正捕手として成長した伏見寅威選手らの後半戦の活躍を考えるとフロントとの連携が取れていなかったように見えるのが気になります。盟友であるはずの福良GMとの間に何があったのかは分かりませんが、再建を目指すチームの今後に支障をきたす前に軌道修正できたのは良かったですね。

投手成績

2020年オリックス先発

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 先発陣では、エースの山本由伸投手と3年目の田嶋大樹投手が短縮日程の中で規定投球回に達し、チームを支えてくれました。山本投手は序盤の不調もあり二年連続の最優秀防御率は逃したとはいえ、前年度は登板間隔を空けながらの規定到達だったことを考慮すると球界のエースへ向けて着実に成長を遂げた一年でした。また田嶋投手も援護が少ない中でQSをこなし、ローテの中心投手としての研鑽を積みました。この二人でシーズンの4分の1近くのイニングを投げていることから、昨季オリックスのMVPと言えるでしょう。この2人に昨年は故障離脱があった山岡泰輔投手を加えた三本柱は12球団でも上位で、全員がまだ若いこともあって今後が楽しみです。あとは不振だった昨年からイニングを伸ばしてきたアルバース投手、中盤は上位チーム相手に試合を作り、先発として成長を見せた山﨑福也投手もよく頑張りました。前年度序盤に結果を出した榊原翼投手が制球難に陥ってしまったのは心配ですが、先発陣に関しては平均的な陣容を揃えることができていました

2020年オリックス救援

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 一方、救援陣リーグ最下位の防御率と苦しみました。特に救援敗北が23を数えており、試合終盤の僅差の場面を乗り切れていません。この救援敗北に焦点を当てると、2014年にソフトバンクと優勝争いしてからの6年間で5回リーグ最下位となっており、かなり長い間不安定な状態が続いていることが分かります。その上、ここ3シーズンはCS争いをしている訳でもないのに優勝チーム並みに救援登板数が多く、故障者も出しているのも心配です。

 先発に良い若手が揃いつつあり、救援陣もセットアッパーの山田修義投手や吉田凌投手、漆原大晟投手など定期的に良い投手が出てきていることを考えると、この救援陣の起用法が凄く勿体なく思えますイニングは短くても頻繁に準備させることによる数字に表れない負担は大きいと思いますし、昨年のロッテのように大胆に登板数制限を設けることも大事になってきそうです。

打撃成績

2020年オリックス打線

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 そして課題の打撃陣今年も貧打にあえぎ、先発陣を助けられませんでした。しかし昨年に関しては、旧首脳陣の起用法の問題も大きかったように思います。特に前半戦は昨年ルーキーとして結果を残した中川圭太選手や開幕直前に故障離脱した福田周平選手の代わりにスタメン入りした大城滉二選手ら深刻な打撃不振に陥っている選手を上位打線で起用し続けたこともあり打線が機能していなかった印象です。あとはゴールドグラブ賞を4回獲得したジョーンズ選手の守備が予想以上に悪かったことで指名打者の枠を埋め、守備の悪いロドリゲス選手を一塁手として起用していたのも良くありませんでした。一塁手なら前年度一定の成績を残したモヤ選手もいましたし、ここまで頑なに昇格させなかったことは複雑な内部事情も察せられるシーズンでした。

 とはいえ首脳陣を入れ替えた後はモヤ選手や伏見選手、杉本裕太郎選手が結果を出しましたし、佐野皓大選手や大下誠一郎選手らが経験を積めたことを考えると悪くはない一年でした。自身初のタイトルを獲得した吉田正尚選手を軸に福田周平選手や復活の兆しを見せたT-岡田選手と安達了一選手のレギュラー陣、そして太田椋選手ら若手陣がシーズン通して計算できれば、今後は得点力も上がってくるのではないでしょうか。

 

2. 打順分析と相性分析

 この節では毎回、少し変わった視点から見た2つのデータを見ていきます。

打順分析

 一つ目は打順分析です。出塁率(OBP)長打率(SLG)に加え、選手の得点貢献度を示すHPRP( 得点関与数[得点 + 打点 - 本塁打]/打席)を各打順ごとの平均と比較することで、リーグの平均的な打線と比べて、代打も含めて各打順にどのようなタイプの打者が置かれ、どのような仕事をしていたかを見ていきます(HPRPを使った経緯は以前の記事参照)。なお、このデータは簡単にパークファクターも反映したものになっています。

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 打順下の選手名はその打順にスタメンで置かれた上位2選手(8割以上スタメンで出ている場合はその1選手のみ表示)になっています。OBPgap青棒)、SLGgap橙棒)、HPRPgap灰棒)は各打順における各指標のリーグ平均との差を示しています。

 打力の低い選手を一、二番で起用し続けたこともあり全体的に得点貢献度がマイナスになっています。とりわけこの3年のオリックス極端にOPSの低い打者を一、二番に置いておりこの打順を重視する現代野球の流れと真逆を行っています。昨年のように安達選手やT-岡田選手が上位打線でも期待できるなら吉田正尚選手をもっと前の打順で使うことも考えていかなければなりません。また、全体的に打順を固定しない傾向にあり、試合結果に伴い打順をいじりすぎなのも気になります。決まった打順で出続けることで次第に順応し良い結果が生まれることも多々あると思うので、投手陣を助けるためにも打線の組み方に関する考えを早急に改めることが今季の最優先課題です。

相性分析

 もう一つのデータは対戦チームごとの相性分析になります。私が作った指標も使っているので、表で使っている各指標について補足説明をしておきます。

QS% : 先発投手のクオリティスタート(6回以上投げて自責点3点以下)試合の割合
QSP : QS試合における貯金;左横のW、L、DはQS試合における勝敗を示す
QR/G : 一試合あたりのクオリティリリーフ* ; 救援投手のリリーフ精度を示す
※ クオリティリリーフ[QR]とは、以前の記事でまとめた救援投手の"リリーフ成功率"を反映した指標で、成功率が80%を超えるとプラス、下回るとマイナスになるようになっている
aQS% : 相手先発投手からの被QS回避率 ; 打線が相手先発投手をどれだけ攻略できたかを示す
aQSP : 相手先発投手からの被QS回避試合における貯金;左横のW、L、Dは被QS回避試合における勝敗を示す
aQR/G : 相手救援投手からの被クオリティリリーフ回避の試合平均 ; 相手救援投手のQRに-1をかけた数値になっている ; 打線が僅差の展開で相手救援投手をどれだけ打っているかを示す
SBI/G : 自チームの一試合あたりの赤星式盗塁*から相手野手の一試合あたりの赤星式盗塁*を引いた数値 ; 攻撃時の野手の盗塁技術と守備時の盗塁阻止技術を併せた指標
※ 赤星式盗塁 = 盗塁 - 盗塁死 × 2

aEI/G : 相手野手の一試合あたりの失策数と失策による失点*の合計値から自チーム野手の一試合あたりの失策数と失策による失点*の合計値を引いた数値 ; 守備力ではなく、エラー回避能力を示す
※失策による失点は、投手の失点から自責点を引いた数字

 これらの指標を使って勝敗や得失点差に加え、投手や打線の各対戦チームに対する相性や盗塁、エラーの対戦チームごとの傾向を見ていきます。

2020年オリックス相性分析

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 平均よりある程度高いか()、平均程度か()、低いか()で色分けしています。やはりソフトバンク、ロッテに対する勝率の悪さが目立ちます。特に打線が完全に抑えられていることにより得失点差が大きくマイナスになっており、相手になっていません。先発では3回以上QSを食らっているソフトバンクの千賀投手や和田投手ロッテの石川歩投手、二木投手らは今年も絶対に当ててくるので、ローテをうまく組み替えるなどの対抗策が肝要です。また、aQR/Gの低さから中継ぎも打ち崩せておらず、援護が見込めないまま僅差の展開で登板させられる味方救援陣に負担をかけています守備固めや代走起用が多く、相手の勝ちパターンが出てくる頃には打てる打者が少なくなっている傾向もあるので、今年は10回まで戦うことを念頭に置いて采配を振るってほしいですね。

 

3. シーズンオフの選手の動き

オフの選手の動き

【2020-2021】オリックス主な入退団

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 昨年の主な退団選手は、アルバース投手、ロドリゲス選手の外国人選手2人だけでした。アルバース投手はローテ投手なので退団は痛いですが、高齢でもあるので世代交代の良い時機だったということでしょう。

 一方、新戦力としてはまず、平野佳寿投手がMLBから復帰しました。入団会見でも「オリックスのために」優勝へ向けて頑張るという熱い思いを語ってくれたので、投手陣の屋台骨を担う活躍に大いに期待です。また、外国人選手では楽天が放出したステフェン・ロメロ選手を獲得し、1シーズンを跨いで連れ戻した形になりました。まだ入国はできていませんが実力や使い方がよく分かっている選手なので、シーズン途中から暴れてもらいたいですね。他の新戦力としては、阪神を自由契約になっていた能見篤史投手をコーチ兼任で獲得しました。逆境の中で成績を残す術を知っている選手なので、コーチとしては勿論谷間の先発としてチームを救ってほしいです。なお、レギュラー中堅手候補だった西浦颯大選手が難病を患い育成契約となったのに伴い、ソフトバンクの育成選手だった田城飛翔選手を育成選手として獲得しています。西浦選手の競技復帰を心から願うのとともに、チャンスを貰った田城選手の飛躍にも大いに期待したいです。

 そしてドラフトでは佐藤輝明選手のくじを外したことで課題の攻撃力は強化できませんでしたが、山下舜平大投手など昨年と同様に高卒選手を中心に指名し、将来の黄金期へ向けた準備を着々と進めています。即戦力としてもアンダースローの中川颯投手と"超"オールドルーキーの阿部翔太投手を指名し、投手力を増強しました。勤続疲労が心配な救援陣の負担を減らす活躍に期待したいですね。

 

4. 2021年の予想布陣

 最後に今シーズンの予想布陣を見ていきましょう。 投手、野手ともに昨シーズンの成績と一軍実績や年齢、最近の二軍成績や記事をもとに、今年の陣容を考えてみました。実績があっても怪我や未入国のため計算できない選手もいるため、選手の背景色によって選手の状態(ほぼ異常なしと思われる選手故障の影響が大きいと思われる選手灰色未合流の選手キャンプ開始時点で育成契約の選手)が分かるようにしています。年齢や怪我の状態を考慮して実績があっても載せていない選手もいますが、その点はご了承ください。

投手陣

2021年オリックス投手予想布陣

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疲弊度は、以前の記事でまとめた昨シーズンの"勤続疲労"を示す指標で、登板間隔が短く投球数が多いほど大きくなります。

(2021/6/23/修正/コロナを憂慮し今シーズンの日本でのプレーを断念したディクソン投手をK-鈴木投手に変更)

 先発陣山本山岡田嶋の若い三本柱が中心になります。イニングイーターの山岡投手は160イニング、田嶋投手は規定投球回、そしてエースの山本由伸投手は沢村賞の項目数トップをクリアできるような成績を残し、素晴らしいシーズンを送ってほしいです。ここまでの三枚看板が揃っているチームはほとんど無いと言っていいので、この最大のアドバンテージを生かすためにも3人のQSを無駄にしないようなローテと打線の組み替えを適度に行ってほしいですね。そして昨年結果を残した山﨑福也投手と高卒2年目の宮城大弥投手もローテに入ってくるでしょう。特に同世代の注目投手に先んじて一軍で潜在能力の高さを示した宮城投手は少し先輩の主力投手らとともに"四本柱"と呼ばれるくらいの飛躍を見せ新人王を選ぶ記者を悩ませてほしいですね。あと一つの枠は増井浩俊投手の予定でしたが、やはり年齢もあって通年では計算できなさそうなので、榊原投手や張奕投手、移籍3年目の竹安大知投手、ルーキーの中川颯投手ら若手の成長に期待しましょう。"能見さん"がコーチ業に専念できるくらいのブレイクを見せてほしいですね。

 救援陣は、ディクソン投手の先発復帰により空いたクローザーの座を誰に託すかが焦点になります。球団の功労者であり経験豊富な平野投手が第一候補になりますが、昨年抑えに抜擢された漆原投手や鈴木優投手に加え、吉田凌投手や吉田一将投手も候補に入ってくると思うので、開幕まで貪欲にアピールを続けてほしいですね。あとは3年目の富山凌雅投手、オールドルーキーの阿部翔太投手らの飛躍にも期待です。彼らとセットアッパーのヒギンス投手、山田修義投手で分厚い勝ちパターンが形成できれば、CS圏内に届くでしょう。

野手陣

 野手陣は、昨年の成績をもとに3パターンの予想打線を組みました。パターンA昨シーズンの最も良い時の打線をベースにした理想打線パターンB二年目のジンクスを考慮し、昨シーズンブレイクした選手を除いて実績や経験を重視した打線パターンC年齢や体調不良によるパフォーマンス低下を考慮し、若手を多く起用した打線になっています。

2021年オリックス野手予想布陣

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 リーグ屈指の打者である吉田正尚選手と昨年覚醒した気配があるモヤ選手が中心になります。吉田正尚選手は昨年はアベレージ寄りでしたが、今年は高打率と長打率を両立して柳田選手に迫る数字に期待です。モヤ選手も入国規制を想定し、正月早々来日する意気込みの高さを見せていますし二人で長打を量産してほしいですね。この2人に加え、かつてのMLBトップ選手としての真価が問われる年になるジョーンズ選手、途中加入のロメロ選手が中軸で力を発揮してくれれば、苦手チームとの得失点差も狭まっていくでしょう。この4人合計でホームラン80本以上は期待したいですね。

 課題の一、二番打者出塁率がある程度計算できる福田周平選手を軸に、T-岡田選手と安達選手の生え抜き中堅陣を調子に応じて的確に起用し長打のある中軸を最大限に活かす上位打線を作り上げていくことが必要になります。再起を図る中川選手も調子が上がってくれば上位打線として期待できますが、これらの選手が計算できない場合はリーグトップレベルの出塁率が確実に計算できる吉田正尚選手をリードオフマンに抜擢するくらいの大胆な采配も求められます打順や僅差の場面での采配において最も改善の余地を残しているチームなので、中嶋監督以下一軍首脳陣がしっかりミーティングを重ねてベストに近い起用をすれば苦手チームに対する借金も減っていくでしょう

 そして、今年の目玉は何といっても満を持して3年目のシーズンを迎える太田選手でしょう。ここまでの2シーズンは不運な怪我にも泣きましたが、短い期間で一軍の投手にも対応してきましたし、大いに期待できますゆくゆくは日本代表の中軸を担う選手にもなると思うので、上位打線を任されるくらい打撃力を磨いて攻守に成長してほしいです。他の若手では、昨日のオープン戦初戦でも本塁打を放った頓宮裕真選手の正捕手奪取にも注目です。昨年成績を残した伏見選手や若月健矢選手との争いになりますが、まずは"打てる捕手"として監督のキャリアハイを軽々とクリアするくらいの実力を見せてほしいです。この2人が重い打順を任されるような成長を見せれば優勝争いができるはずです。

 

5. 終わりに

 以上、2021年のオリックス・バファローズの戦力分析でした。昨年はここ20年で五度目の監督途中交代を行い、起用面の隔たりなどからも開幕前のチーム作りの時点で既に他球団に遅れを取っていることを痛感する年でした。長い間低迷する主要因にも思えますが、今年はコーチの一軍と二軍の担当制を撤廃するなど抜本的な改革を行っており、改善しようとする姿勢は見られます良い選手を"起用するだけ"で終わらず、首脳陣が「どこでどう起用するか」をデータも駆使して協議検討することで選手の競技人生、ひいては球団の未来も変わってきます。そこをしっかり意識して、将来的な黄金期の序章となる一年にしてほしいですね。

 これでパ・リーグの戦力分析が終わりました。結構大変でしたが、まだ半分ですね・・・ただ開幕まであと3週間程度あるので、なんとかこのペースを維持して残りのセ・リーグの記事も載せていきたいです。それでは次回は昨季セ・リーグ首位の読売ジャイアンツの記事になります。ではまた。

 

6. 参考サイト

プロ野球 - スポーツナビ

NPB.jp 日本野球機構

- nf3 - Baseball Data House Phase1.0 2020年度版

データで楽しむプロ野球

2020年12球団パークファクター - 日本プロ野球RCAA&PitchingRunまとめblog