プロ野球データblog -Jumble-

プロ野球の面白いデータや記録をまとめています!

MENU

登板間隔の拡大が進む現在の先発投手事情【付録・2022年版リリーフ精度ランキング】

第5回WBCは最高でしたね!不振だった村上選手の逆転サヨナラ打で締めたメキシコ戦以降の流れはフィクションでもありえないような展開で、野球の面白さを存分に感じられる素晴らしい大会でした。前回までと違い、第2ラウンド(今大会では準々決勝ラウンド)が一発勝負となったことで投手の負担とマンネリ度合いが軽減されたのも良かったです。終始大谷翔平選手がかっこいい大会でしたが、個人的にはメキシコ戦の吉田正尚選手の同点3ランが一番痺れました。やっぱりイニングの最後のアウト、計27アウトを取るまで何が起こるか分からないのが野球の最も面白いところですね。

今回は、先発投手の登板間隔に関するデータを集めたので記事にしました。最後の方には、昨年の救援投手についてのデータも載せています。どうぞご一読を。

 

※2023/7/19 2023年前半戦の登板間隔データもまとめました!

www.baseball-jumble.com

 

登板間隔の拡大が進行する近年の先発投手

最近のプロ野球では、昔よりも先発投手がイニングを食えないと感じる場面が多いですよね。松坂大輔投手のような先発完投型の投手がエースと呼ばれていた時代は過去となり、沢村賞における完投のノルマはほぼ達成不可能な数字になりました。原因は、今では150km台後半で驚くことが少なくなるほどに上昇した平均球速と、データ解析機器の進化と普及により現場で利用可能なデータが増えたことで打者のアプローチ方法が変わったことにあると言えるでしょう。そんなレベルの上がった現代野球では、負担の大きい先発投手が最大効率で力を発揮するため、球数や登板間隔などにフィーチャーされることが多くなりました。その中でも、登板間隔は近年重要視されています。現在でも「中4日」が主流のMLBで二刀流選手として活躍する大谷翔平選手のデータやダルビッシュ有選手の過去の発言からしても、先発投手のパフォーマンスに大きな影響を与える最重要のファクターとなっています。日本でも「中10日方式」を導入して連覇したヤクルトのように、プロ野球でも勝つために先発の登板間隔を管理する手法が広まってきました。今回は、登板間隔に関するデータに焦点を当て、ここ20年余りの先発投手の役割の変化を見ていきます。

まずは、投手と野手の二刀流選手として、ここ2シーズン凄まじい成績を残した大谷翔平選手の投手としての登板間隔の変化を見てみましょう。なお、以下のグラフで「中10日以上」とは開幕日などシーズン初登板日を含むこととします。

先発した次の日に休まない二刀流選手として試行錯誤を重ねるごとに「中5日」起用が増え、「中10日以上」は減っており、この2年間の間に大谷翔平投手が大きく進化したことが分かります。2022年後半は平均的なエース投手と同程度の登板間隔で先発しながら、非常にハイクオリティな投球で成績を伸ばして主要3タイトルで4位以上に名を連ねており、来年以降のタイトル受賞がほぼ確実なエース投手に成長したと言えるでしょう。これでいて、打者としても本塁打王、ひいてはシルバースラッガー賞も狙える位置にいるのは本当に訳が分かりませんね。

※コロナ禍に見舞われ短縮シーズンとなった2020年を除く

上のグラフのように、メジャーリーグ最上位層のサイ・ヤング賞投手では全登板数の半分以上を「中4日」で投げるのが普通であり、NPBの投手が適応する一つの障壁となっていました。NPBよりも一週間以上短いタイトな日程の中で引き分け無しの162試合を戦わなければならず、移動距離も段違いなことを考えると本当にハードな環境ですよね。ただ、ここ6年は平均イニングが急落し登板間隔を広げる方向にシフトしており、大谷翔平選手がサイ・ヤング賞を獲るためのハードルは次第に低くなってきているようです(昨年の大谷翔平投手の「中4日」は一回のみ)。このように大雑把ですが、MLBでは現在でも「中5日以下」が主流となっています。

※シーズン143試合ペースに換算(沢村賞受賞者がいなかった2000年と2019年は除く)

一方、週6試合を基本とする現代のNPBでは「中6日」で先発させるのがが普通です。その中で、200イニングが選考基準の一つとなっている沢村賞級のエース投手では「中5日」登板も必要となってきます。松坂世代の球界入り以降の平均的な沢村賞投手では、年20試合程度の「中6日」登板に加え、5試合程度「中5日以下」で登板し、計27-28程度先発することでノルマの200イニングを賄っていました。しかし近年は、故障防止と前述した球界の全体的なレベルアップによって「中5日」登板が沢村賞受賞投手の中でも減ってきていることにより、イニング数のノルマを達成することも難しくなってきています。上のグラフの2017年以降のデータは実質3投手(菅野智之投手、大野雄大投手、山本由伸投手)のデータしか反映されていないため変化が分かりにくいですが、規定に乗る投手が減ったことに表れているように、実際はもっとイニングを消化できなくなっていることでしょう。分業化が進んでいなかった平成初期以前はおそらく「中5日以下」の登板が多く、現在よりも簡単に200イニングがこなせていたことを考えると、この30年のNPBで先発で投げる投手の役割が大きく変化していったことが分かります。

1999年以降の全先発投手の登板間隔(救援登板からの日数は考慮しない)ごとの割合を見ると、この24年間にかけて「中5日以下」が順調に下がっているのに伴い、「中6日」制にシフトしたことがはっきりと見て取れます。そしてコロナ禍以後のここ2年は「中7-9日」の試合数も増えてきており、高津ヤクルトの成功も相まって、今後も登板間隔の拡大が進んでいくことが予想されます。

2010年以降に絞ると、登板間隔に余裕を持たせた「中7日以上」の登板数が「中6日以下」と変わらない程度に増えてきていることが分かります。同様に平均消費イニングも低下傾向にあり、先発投手が勝敗に直結する終盤までを投げ切るのは非常に難しくなりつつあります。ここ2年は2019-2020年の低迷期からは持ち直しましたが、有力な外国人野手が少なく打低傾向の期間であったため、今後も先発投手の消費イニングの低下が進んでいくことでしょう。イニングが食えなくなることは、勝ち投手となる可能性も減っていくということなので、先発投手が今までのように勝利を積み重ねることも難しくなります。そこで、単なるイニングやQSなどの既存指標だけでなく、登板間隔も考慮した先発投手のパフォーマンスをタイプごとに分割し、それに応じた戦略を練ることが、長いシーズンを高い勝率で乗り切るために不可欠になっています

 

先発投手のスタート評価

◇先発投手のパフォーマンスを細分化する

最近のNPBを観ていると、5回途中で降りる投手のような、従来のQSやHQSで評価されないような短いイニングを投げた投手も勝つための大事な仕事をしているな、と感じる場面が以前よりも増えました。ソフトバンク和田投手、ヤクルト石川投手などのベテラン陣は特に、そういう投球で40を超えても通用し続けていますね。その分負担のかかる救援投手の運用法は熟慮が必要ですが、休養日を積極的に設けるなど双方に不利益の無い管理体制を整備できれば6回以上を投げる体力の無い投手でも勝利に貢献することが可能です。先発のパフォーマンスを評価する指標としてはQS(6回3自責点以下)やHQS(7回2自責点以下)などがありますが、これだけではこのような投手のパフォーマンスまでは可視化できません。そこで、そのような先発投手のパフォーマンスも数値化するため、以下のように先発投手のスタートを従来のものよりも細分化してみました

HQS(High Quality Start):7回以上かつ2自責点以下の試合

MQS(Moderate Quality Start):6回以上かつ3自責点以下の試合のうち、HQSでないもの

wS(winner's Start):5回以上6回未満かつ3自責点以下の試合

yyS(you yattoru Start):5回以上4自責点以上の試合

shS(short Start):5回未満で降板した試合

昨年の戦力分析の記事でも似たようなデータを載せていましたが、少しデータの区分条件等を変えています。HQSとMQSは従来のQSを判別できるように分けただけです。それ以外を細分化し、救援投手に繋ぐまでに試合を作る勝つためのスタートwS、失点は多いが先発投手としてイニングを食った最低限ようやっとるスタートyyS、5イニング未満で降板したショートスターター的なスタートshSと命名しています("ようやっとるスタート"だけ少しふざけた日本語になっていますが、語感重視で決めました!)。

このような区分で先発の各登板を分類すると、面白い傾向が見えてきます。

 黄土色の折れ線グラフはQS率、緑色はwS率(QSとwSの合計試合の割合)を表しています。これを見ると、2015年あたりからHQS数が減少傾向なのが目立ちますね。それに伴いQS率も下がっており、yySも減少傾向であることから、先発がイニングを食えなくなっていることが分かります。一方で、5回途中まで仕事をしたwSは特にコロナ以後のここ数年で増えており、先発投手として計算して良い大事な仕事となっています。指標上は統一球導入初期(2011-2012年)の次に打底シーズンだった昨年にそれほどQS率が上がっておらず、wSが増えていることが、この10年で野球というスポーツのゲームバランスが大きく変化したことの証明になっていると言えるでしょう。

◇2022年シーズンNPB12球団の先発スタート評価データ

次は以上のスタート評価を登板間隔ごとに分け、昨シーズンの各チームのデータを下位から見ていきます。QS率やwS率とともに、勝率、平均イニング、平均投球数に関するデータも入れています。

※以下のチーム別グラフは横スクロールで切り替え可能

中日と日本ハムは最下位でしたが、両チームとも三本柱がしっかりしているため、登板間隔の配分としては平均的なデータとなりました。中日は中7日以上のQS率、wS率も安定しており良く見えますが、小笠原、大野、柳の三本柱に髙橋宏斗投手を加えた4人だけでQS以上の大半を賄っているのが課題です。新加入の涌井投手にも期待したいところですが、登板間隔を空けた状態でのwSでローテの座に就いているベテランの松葉投手に代わる投手が出てくると、ポストシーズンも狙えそうです。

日本ハムは一年かけて若手投手の適性を試したためか、中10日以上のwS率が12球団で唯一50%を割りました。勝率もかなり低いことから、この起用法がネックとなり最下位を独走してしまったと思われます。2019年のように無理矢理ショートスターターを連発しなければならない選手層ではないので、狭い北広島に移って打線の得点力が増すとともにルーキー金村尚真投手ら先発適性のある投手を抜擢してくれば、予想を超える成績を残してくることもあるでしょう。今年の新庄ハムには要注目です。

広島は中6日以下の試合がトップで、佐々岡監督らしい典型的な先発先導型のチームです。玉村投手や遠藤投手など若い投手にも登板間隔によらずQSを期待できる選手層が強みですが、この状態で勝ちきれないシーズンが続いたこともあり、少し方針転換を考えた方が良い時期かもしれません。慢性的に枚数が揃わない救援陣をカバーしようとして森下投手ら優秀な先発投手がへたってしまっては元も子もありませんし、新井監督には再び黄金期を迎えるための土台作りが求められています。

一方、吉井コーチ(現監督)のもと厳格な登板管理を進めてきたロッテは対照的で、中6日以上空けることを基本に負担をかけない投手運用となっています。昨年チーム最多QSをマークした石川歩投手や美馬投手のベテラン陣の衰えが懸念点で、現在のオリックスのような安定感はまだ望めませんが、佐々木朗希投手に加え、西野、メルセデス、種市ら優れた投手もローテに入ってくる今季も平均以上の成績を期待していいでしょう。

2021年に中5日以下を40試合以上導入して失敗に終わった巨人も、完全な中6日制にシフトしつつあります。ただ内容の悪い投手を降ろすのが早いのか、yySが12球団平均よりもかなり少なく、救援陣に余計な負担をかけているのが問題です。総入れ替えした外国人全員が先発で活躍してくれれば良いですが、もしダメでも柱の戸郷投手や救援陣に負担をかけ過ぎない地に足のついた采配が必要です。何事もすぐには良くならないので、長い時間をかける覚悟で建て直しを図ってほしいところです。

中5日以下がほぼ無く、完全中6日制に近い楽天は投手運用的には理想的ですが、20代のQS数、wS数が12球団最下位で、次世代の選手層が慢性的な課題となってきています。38歳となった岸投手は突然成績を落としてもおかしくない年齢なので、成績度外視で若手に先発機会を与えていかなければなりません。yySが個人トップだったエース田中将大投手を筆頭に長いイニングを投げてくれるベテランの力は健在なので、頼れるところは頼りつつ、世代交代の空白期間を作らない運用をしてほしいですね。

阪神、西武の両チームは中6日で投げられるタフな先発投手が揃っているチームで、昨年は投手力のメインにこの順位まで上り詰めました。特に阪神は主力ローテだけでなく層も厚く、12球団トップのQS率とwS率をマークしています。長い間生え抜き投手が定着しなかった中で、青柳投手が安定感のあるエース投手に成長したのが何より大きいですね。伊藤将司投手の状態は気になりますが、放出した藤浪、ガンケル両投手のポジションに若い才木投手と西純矢投手が入るなど不安点よりも伸びしろの方が期待できる陣容です。

昨年の西武の先発防御率はリーグ2位で、長い間投手力が課題だったチームから生まれ変わりつつあります中6日以下でのQS数がトップだったエース・髙橋光成投手を軸に若い投手でローテを形成できており、23歳の平良海馬投手が配置転換となる今季は更なる成績向上が期待できます。連覇しながら2年連続で下剋上を食らった屈辱から、数年で先発・救援ともに短期決戦を勝ち抜ける投手力に変貌を遂げた成長速度は12球団トップと言え、自主性の高いチームの中で選手とコーチの関係性の高さが窺えます。反対に打撃力が穴になっていますが、コロナ以来の打低雰囲気を完全に振り払うホームラン攻勢を見せてほしいところです。

DeNAとソフトバンクQS率は低めですが、wSを厚い救援陣の力で勝利に結び付けているチームで、戦略的に似たチームです。球界参入以来、故障歴をある程度無視して先発強化を図ったDeNAは長らく先発陣が揃わない状況が続いていましたが、昨年は久しぶりに中6日以下で投げられる三枚が揃い、2位浮上の原動力となりました。そして今季は「中3日」経験もあるサイ・ヤング賞投手、バウアー投手が加わり、一気にストロングポイントにもなりそうです。前例のない出来事なので、どういう運用になるか本当に楽しみですね。

ソフトバンクは2位と好成績だったものの、最下位だったQS率と千賀投手のメジャー移籍に危機感を感じたのか、ローテ経験の豊富なガンケル投手、有原投手を補強しました。昨年は大関投手が台頭しましたが、確かに中6日以下で投げている投手の顔ぶれはここ数年変わっておらず、成績低下の前触れと言える状況です。他のチームよりと比べると若手投手の抜擢が遅いような気もするので、補強選手に安易に頼るのではなく、豊富な選手層と充実した設備を活かして臨機応変に一軍と二軍を行き来できるような環境になっていくとより良いかもしれません。

12球団の中で最も革新的な運用だったのが、実に100試合を「中7日以上」で先発させながら、2年連続の首位を取った高津ヤクルトです。通常の中6日以下で投げるローテ投手の層は薄いままですが、中7日以上でQSを稼ぐ裏技で平均的な投手指標にまとめており、まさに令和のID野球と言えるでしょう。小川投手や高梨投手、wSが稼げる大ベテラン・石川雅規投手が成績を落とすとチーム成績に大きく響くのが難点ですが、登板間隔を空ける運用で選手生命を削らないうちに有望な若手投手が独り立ちし、スムーズな世代交代ができると今後も強さを維持できそうです。

ヤクルトと対象的に王道かつ現代的な運用で2連覇したのがオリックスです。ほとんどが20代中盤以下の先発陣で優秀なQS率、wS率をマークしており、HQSの圧倒的な多さからも隙がありません。当たり前のように前人未到の連年投手5冠を達成した山本由伸投手ですら、比較的登板間隔を空けた運用となっており、救援陣も整備されてきたこれからが本気の常勝時代という気配があります。型にはまらない考えを持つ首脳陣がどのように球界を引っ張っていくのか、これから楽しみです。

 スタート種別ごとの勝敗、得失点をまとめたものが上記の表になります。QSも大事ですが、QSでの貯金が多いチームが必ずしも上位に行くとは限らないことが分かるでしょうか。ヤクルトは圧倒的な得点力だけで勝っているようにも見えますが、中7日以上で多く稼いでいるwSの試合を貯金源にしていることから、登板間隔を空ける運用と救援陣の整備が高い勝率に大きく貢献していると言えるでしょう。中日を除き、貯金を稼ぎにくいwSの試合をプラスにしているチームほど上位にいるため、このような僅差の試合を落としているとAクラスを維持できなくなってきています。yySが多くてlostS(QS、wS以外のスタート)の借金を増やしているチームは、wSで留め勝ちパターンへ切り替えるタイミングもポイントです。短いイニングを繋いで勝つ勝ち方は、選手個人の価値に着目されがちなセイバーメトリクスなどでは評価されにくいですが、シーズンを高い勝率で乗り切るのに不可欠な戦略になっています。おそらくこれからも、登板間隔と救援投手の登板管理を徹底し、トータルでの貯金を考えるチームが黄金期を築いていくでしょう。なお、yyS(ようやっとるスタート)の昨年トップは中日でした。

 

付録・救援投手のクオリティリリーフランキング(2022年)

最後に、昨年まで載せていた救援投手のリリーフ精度を評価するために作ったクオリティリリーフという指標の2022年版をざっと振り返ります。

www.baseball-jumble.com

昨年の記事に書きましたが、救援投手のリリーフ成功率とは

・ホールドあるいはセーブが付く場面で登板する
・自身が走者に出塁を許したことによって相手の攻撃が継続し、以後の同一イニングで自身あるいは後続投手の登板中に同点または逆転となるランナーの生還を許す

 

以上の条件を満たす登板(1試合につき1回)をブロウンリリーフ(BR)と規定し、

 

リリーフ成功率[R%] = (ホールドポイント[HP] + セーブ[S]+ 引分完了[DD] - 盗勝)/(ホールドポイント[HP] + セーブ[Sv]+ 引分完了[DD] - 盗勝 + ブロウンリリーフ[BR])

以上の式で表す指標です。なお引分完了とは、現在の規定ではホールドが付かない引分試合の最後を締めた投手に付けたホールドのような記録です(これも詳しくは昨年の記事を参照ください)。

これをもとにリリーフ成功率80%を及第点と仮定し

 

クオリティリリーフ[QR] = ホールドポイント[HP] + セーブ[Sv]+ 引分完了[DD] - 盗勝 - ブロウンリリーフ[BR] × 4

という式から求めたのが救援投手のリリーフ精度を示すクオリティリリーフ(QR)という指標です。さらに今年は救援投手にクオリティリリーフを付ける一打を打った選手にクオリティバット(QB)という記録を付けたので、(大した意味は無いかもしれませんが)ついでに見ていきます。

セ・リーグは、セーブ王の大勢投手が新人王を争った湯浅京己投手を抑え、トップでした。防御率を見ると打低年にしては低くはないように見えますが、メリハリの付いた投球でブロウンリリーフを3に留めており、堂々の一位と言っていい華々しいデビュー年でした。WBCで共演もあった同世代で仲の良い湯浅投手と切磋琢磨して、今後の伝統の一戦と代表戦を盛り上げてほしいですね。そして、低迷期を脱した山﨑康晃投手も3位と見事に復活しています。メジャー挑戦をやめて残留したチームで、数々の大記録をこれからも積み重ねていってほしいところです。

クオリティバットは、56HRを放った村上選手の独壇場となりました。僅差の終盤でホームラン10本、29打点は怖いですね。このような成績に表れている村上選手の精神的な強さを信じていたからこそ、栗山監督はメキシコ戦の最後の最後の打席を託したのでしょう。ヤクルトでは期待の遊撃手・長岡秀樹選手が2位に付けており、今後の成長が楽しみです。上位に多くランクインしている昨年の広島はチームQBが12球団2位と多く、救援投手から効率良く得点できていました。

パ・リーグは6月以降勝ちパターンに定着し、リーグトップの61試合に登板した楽天・西口直人投手がトップでした。これだけ僅差での登板機会が多かった中、ブロウンリリーフが一度だけだったのが素晴らしいですね。QR2位の松井裕樹投手が安定しているここ2年は悪くはないですが、登板数が嵩んでいる既存リリーフが多いため、新しい戦力が成績を伸ばしてきたことに石井監督も安堵していることでしょう。遅いプロ入りから2年目で花開いた阿部翔太投手、ロッテで勝ち継投として進化した小野郁投手もリリーフ成功率が素晴らしく、上位にランクインしています。全体的にはQRが抜けている投手が少なく、継投策に試行錯誤しているチームが多い印象のシーズンでした。

クオリティバットトップには、島内選手、吉田正尚選手、柳田選手という決定力のある打者が名を連ねています。僅差ビハインドをゼロにしてくれる選手の大切さは、メキシコ戦の吉田選手で存分に思い知らされましたね。上位に多い楽天はチーム単位でもパ・リーグトップなので4位という結果が勿体なく思えてしまいますが、先発がQSをできなかった試合で借金-29、平均得点3.30という結果にも表れているように、ビハインド展開に弱いのが難点です。おそらく先発投手と同じように、良い時と悪い時の差が大きいことが問題だと思うので、新しく獲得した阿部寿樹選手などを上手く起用し、好不調の波を作らない選手層に拡充していくことが今季のポイントになるでしょう。

チーム全体のQRでは最下位だった前年から一年で回復した西武がトップでした。育成ドラフトから2年目で更に成績を伸ばしてきた水上由伸投手や配置転換された本田圭佑投手の台頭で近年最高レベルに層が厚くなっており、平良投手が抜ける今季も好成績が期待できます。QRが30以上のチームはさほど問題が無いと言いたいところですが、セーブ精度を示すQSv(クオリティセーブ)が唯一マイナスとなっている阪神は非常に勿体ない戦い方だったと言えるでしょうか。やはり試合を締める投手が打たれているとチームのムードも悪くなりますし、今季は最初から実力重視で決めてディスアドバンテージを無くしていきたいところです。

一方、既存の抑え投手の勤続疲労が限界を迎えたロッテとソフトバンクはQRが伸び切りませんでした。ロッテからロベルト・オスナ投手をヘッドハンティングしたソフトバンクは問題ないかもしれませんが、先発のwSが多いチームであるため5回から7回を投げる投手が頼りないと厳しくなるので油断は禁物です。ロッテは小野投手やペルドモ、カスティーヨ両新外国人投手を軸に、勝負どころで経験も実績も抜群のベテランの力を借りる布陣に整えられれば理想的ですね。

QRがマイナスだった巨人、広島、日本ハムの3チームは明確に建て直しが必要になってきています。巨人は数字以上に登板数が多かった生え抜き投手が翌年以降活躍できていないことが続いているのが心配です。一つ負けることへの抵抗を無くし、余計な継投をせずに済むような采配を徹底することがこれからの選手を守るために一番大事なことになるでしょう。広島は7-8回のBRが栗林投手がいる9回の10倍となっており、せっかくの抑え投手を活かしきれていません。フランスア投手が怪我して以来の課題ですが、せめて8回を安定して抑えられる投手起用の目処を、遅くとも交流戦までには立てておきたいところです。日本ハムは最下位でしたが、固定しない起用法だったのでよく分かりません。新しくなった球場のマウンドで心機一転、田中正義投手や石川直也投手を中心に、他球団の予想を裏切る盤石なリレーが形成できると面白いですね。

登板数的には合計500登板以上のチームはゼロとなっており、ここ数年で大事な戦力である救援陣に負担を与えない運用が着実に広まりつつあります。先発投手のイニング低下が進む中、救援投手の価値は以前よりも確実に上がっているので、能力のある投手がなるべく長く活躍できるような体制を今後も追究していってほしいです。

 

あとがき

予想より長い記事になってしまいましたが、以上です。急いで書いたので、文章がおかしいところが多いかもしれません。先発投手がイニングを食えなくなってきた中で、現在の各球団が起用法に試行錯誤している状況が伝わったら有難いです。

先発のイニング低下に伴い、将来的には時短のためイニングを短縮することも考慮に入れなければならない時代になっていくのかもしれませんが、個人的にはやめてほしいですね(9回打ち切りとかは良いのですが・・・)。やはり、先週のメキシコ戦のように僅差の終盤の展開が面白いのが野球だと思うので、メジャーで今季から試されているピッチクロックなど他の施策を10年単位で試し尽くしてから、最後の最後の手段としてイニング短縮は取っておいてほしいです。それに、ある程度時間を忘れて(それほど集中して見ていなくても)割りと楽しめるのが野球の良いところなので。

WBCの余韻も束の間、今週から新しい一年が始まりますね。今シーズンも良い年となるよう、陰ながら応援しておきます。それでは。

 

参考サイト

プロ野球 - スポーツナビ

NPB.jp 日本野球機構

- nf3 - Baseball Data House Phase1.0

Baseball-Reference.com: MLB Stats, Scores, History, & Records

スタメンデータベース